イラスト:上田 耀子

「ひとりで育児なんて無理!」と何でも自分の実家を頼っていた妻。それが夫を苦しめていることに気が付かず、「感謝してよね」と何気なく放ったひとことで夫婦の関係は壊れます。

「もう実家に帰ってほしい」と言われて気がついたのは、家庭を顧みない自己中心的な自分の姿でした。

帰省を当然とする「実家依存症」の妻が見落としていたのは、何だったのでしょうか。

1.「実家に頼るのは当然」?

34歳のある女性は、二人目の子供を妊娠中でした。

夫と立てた計画の通りに妊娠ができ、「ラッキーだよね」と友人に笑顔で話せるのも、彼女には実家の両親が育児の手伝いをしてくれる環境があるから。

一人目を出産したあとから、彼女は同じ市内にある自分の実家に頻繁に戻っては子どもの世話を任せ、美容室に行ったりジムに通ったり、気ままに過ごしていました。

両親はそんな娘に文句も言わず、ひたすらに孫を大事にかわいがってくれるといいます。

「自分の娘が子どもを産んだらうれしいだろうし、頼られたいって言うでしょ?

子どもも私たち以外の人間と触れ合ういい機会だから」

と彼女は悪気のない様子で話していましたが、夫は同じではありませんでした。

「旦那はね、あまり実家に頼りすぎるなって言うのよ。

自分の親にも預けたいんだろうなと思って『あなたの実家にも子どもを連れていく?』って訊いたんだけど、

『そうじゃない。家のことをちゃんとしてほしいし、家族三人で過ごす時間がほしい』

って。

でも、赤ちゃんの面倒も見て家事もしろってひどくない? 自分は仕事をしているからって言い訳できるだろうけど、私は何でもひとりでやらないといけないの?」

と、「実家に頼るのは当然」という姿勢を崩さずにいました。

2.置いてけぼりになる夫の気持ち

彼女は、疲れているときは晩ごはんの用意も母親にお願いして、仕事帰りの夫を実家に呼んでみんなで食事をする日も多かったそうです。

その間子どもは両親が世話をして、夫は触れることができない状態。お風呂も実家で借りて、三人で自宅に戻るのは寝る直前になることも。

「それじゃ旦那さんがかわいそうじゃない?」

と尋ねると、

「どうして? ご飯が食べられるしお風呂もあるし、楽ができていいじゃない」

彼女は何でもないように答えました。

でも、自宅に戻ると夫からは

「仕事で疲れているから、できればこの家でゆっくりしたい。

ご飯を作るのがしんどいときは出前でもいいから、実家じゃなくてここで三人で過ごそう」

とたびたび口にすることがあったそう。

それでも、彼女は実家を頼ることをやめず、二人目を妊娠してからは「つわりがひどい」「体が重い」と何かと理由をつけては実家で過ごす日常を続けていました。

そんな妻を見て、夫は

「俺はもう実家には行かないから。

仕事が終わったら子どもを迎えに寄る。俺は子どもと過ごしたい」

と彼女の実家に行くことをやめ、仕事帰りに子どもを引き取って自宅に戻るようになります。

そんな夫の姿は、彼女にとって

「私の気持ちをわかってくれない」

と責める理由になりました。