4.自己中心的な考えが呼んだ夫婦関係の破たん

彼女は、夫が自分の両親にお金を渡していることを知りませんでした。両親に確認すると、

「お前も知っているものだと思って何も言わなかった」

と返ってきて、実際は彼女のいないところでいつも感謝の言葉を言われていたこと、でも本当はもう少し自分たちの家で三人で過ごしたいと話していたことなどを初めて聞きます。

どうしてそれらを彼女には隠していたのか、夫は自分の気持ちを無視する妻を見限って、その両親に伝えることで現実を変えたかったのかもしれません。

「金輪際戻ってこなくていいと旦那に言われたって親に言ったら、真っ青になって慌てちゃって。

どうして夫婦で話さないのか、どうして旦那のことを考えなかったのかって、怒られた」

彼女は、両親から「そんな状態でうちに来るのは受け入れられない」と言われます。そのとき、夫の言葉を無視していたこと、家族で過ごしたいと繰り返し言われていたのを「でも私は楽がしたいから」と自分を優先していたことに気が付き、夫の怒りを思い出しました。

片付けもしていない荒れた部屋に夫は戻り、自分で洗濯をしてご飯を作り、子どもをお風呂に入れてふたりで寝る。家族のために一生懸命働いているのに、それをねぎらってくれる妻はおらず、挙げ句の果てに「うちの親に感謝してよね」と上から目線で言われる始末。

これでは不満もストレスも募り、夫婦でいる意味もなければ、夫としての立場もありません。

「子どもがいなければ離婚したいと思っているだろうな」と考えましたが、それは彼女には伝えませんでした。

彼女は今までの自分を振り返って、自己中心的な態度で夫を苦しめていたことを反省します。

「家族で過ごしたいって言う気持ちを無視した私がいけなかった。

いつも実家の話題ばかりであの人の話を聞くこともしなかったし、お疲れさまとも言わなくなった。

でも、あの人は私と子どものために、うちの親にお金まで渡してくれていたんだ」

夫がどんな気持ちで子どもを迎えに来ていたか、一緒に帰らず「また明日ね~」と子どもに手を振る自分をどんな目で見ていたか、彼女は今さらのように自分勝手な振る舞いを恥じ、何とか夫に許してもらうことを考えています。

妊娠中なので両親も強く拒否はできず、結局実家に戻っていますが、子どもは夫が連れていったきり会えておらず、夫の仕事中どこに預けられているかも彼女は教えられていません。

こんな結婚生活を招いたのは、自分のせい。「感謝してよね」を聞くべきなのはほかでもない自分であり、また夫の傷ついた心とどう向き合うかも、彼女の問題です。

実家を頼るのは決して悪いことではなく、大変なときに力を借りる人がいるのは良いことです。

考えないといけないのは、実家とパパ・ママ・子どもで過ごす時間のバランス。結婚したのなら夫と子どものいる家庭こそ自分の居場所であり、そこをないがしろにして実家ばかり頼っていては、夫の信頼も愛情も育たないでしょう。

苦しんだ夫の心をどう受け取り、これからどう変わっていけるか。彼女が向き合うべき問題はまず自分の考え方だといえます。