今の芸人像とは少し違う「こうなったらアカン」 芸人には反面教師に

石山:この作品で描かれてるのは、ちょっと世代が前の芸人さんみたいですよね。

山﨑:確かに、私達の世代よりはもう1コ前の世代の先輩たちの感じはありましたね。

石山:今ああいう人おったら、もう激イタやから、たぶん(笑)。僕らの世代の芸人で、消費者金融寄って後輩のために20万くらい下ろして飯行くとか、そんなことする人はもうおらんし、居酒屋でケツ出すノリとかもない。

山﨑:私たち、1年に1回コンプライアンス研修を受けてるので(笑)。


石山:昔の人だったらあれくらいが芸人なんだよ、っていうものがもう通用しなくなった。でも『火花』って時代設定がちょっと昔じゃないですか。昔は面白いとされていたノリなのかもしれない。俺だったら電話で、「もしもし今どこにおんの?」で一回ボケなあかん先輩は、マジで電話出えへん(笑)。

藤田:ボケを強要してくるノリは大阪でももうない。

山添:へ~、大阪の方がいそうなイメージ。

石山:そう思うやろ? でももう古い。大阪でもやってる人は1人も見たことない、昔はおった気はするけど。

藤田:それに今はもうハイボール3杯で解散しますよ。

山﨑:今はあんまりいないかもしれないですね、神谷さんみたいなタイプは。

山添:でも、ああいう人に憧れる芸人もいっぱいいますね。

藤田:あそこまで自分を貫き通してっていうのが憧れるんでしょうね。

石山:でもちゃんと売れてないし。結果が出ちゃってるんですよね。

山﨑:厳しい!(笑)

撮影:小林裕和


石山:みんなが『火花』って面白いぞ!って言うのは非常に危険やと思う。俺は警鐘を鳴らすために言うんやけど、めっちゃ褒めたいとかじゃなくて、こうなったらアカンでって反面教師に感じるかな。

だって、ハッキリ言って『火花』に出てる登場人物に自分は絶対絡まへんから。実際にいたら俺は斜めに見て黙って無視して通り過ぎるタイプの芸人像しか『火花』には出てなかったと思う。ああいうタイプの人たちのことは「そういうのはずっと酒飲みながら言っとけや」って思ってたから。

だから観た人全員が「めちゃめちゃ面白かったです!」っていうのはマジで危険やと思う。だって全然芸人のこと知らん人が観て「芸人ってこうなんや」って思われたら、俺は「ちゃうちゃう」ってなるもん。

――でも神谷さんは売れることができないので、世間一般で受け入れられるような芸人ではないというのを描いてもいるのかな、とも思うのですが。

石山:
そういう意味では、スパークスの漫才は後半になるにつれちゃんと上手くなっていってますよね。最初はわざと面白くなくやってたんやろうけど。だからちゃんと練習して形になってるんやなっていう感じがすごくしました。ただ、神谷さんみたいな芸人は「おるなー」っていうか。

山﨑:確かに、めっちゃわかる(笑)。

石山:ネタやる前に後輩に「まぁ見とけ」ってかましていっちゃう感じ。俺はそんな先輩に「見とけよ」って肩叩かれても「もうええって」ってなると思う(笑)。