ネタも需要に合わせる 石山「マッサージのネタを作った時が一番キツかった」

撮影:小林裕和

――スパークスの葛藤があったように、求められていることと自分がやりたいことが違うというのは、クリエイターあるあるだなと思いましたし、どの仕事にも起こることだと思うのですが、みなさんどうやって受け入れていますか?

山添:需要に合わせるのが仕事って、どこかで切り替えてるところがあると思います。

山﨑:芸人もいろんなパターンがいますけど……、たぶん徳永と山下の違いは、徳永はどちらかというとずっと舞台に立っていたいタイプの芸人。山下はテレビに出てばんばんタレント活動したいタイプの芸人で、そういうタイプの人は求められたことに応えようとするんですよ。

私も元々テレビに出たいって気持ちがどちらかというと強めだから、しなきゃいけないところと、自分がどうしてもしたくない部分の折り合いをつけながら、向こうの希望に応えながらやるタイプです。

相手の意見に完全乗っかりするタイプの人もいれば、それはしないって言って「舞台でやってくんだ!」って人もいるので。性格にもよるし、自分が芸人としてどこを目指してるかですね。

石山:そういう意味ではスパークスはすごいバランスいいんですよね。片方がタレントとしてテレビに出れば、コンビ名は出るわけで。徳永がネタ作ってて世間はキーマンは徳永やって思いながら山下も活動できるから、バランス的にはすごい良いコンビなんですよ。

そしてケイちゃんが言いたかったことがバンビーノが言いたかったことです(笑)。求められることに関してはいいところで折り合いをつける。

山﨑:向こうが言ってることも理解はできるじゃないですか。バンビーノだったらそれこそ「ダンソンやれ」って言われてやらなきゃいけないけど、それ以外もやりたいって気持ちもあって。よく見てると、「じゃあ、最後だけダンソンやります」みたいな、そういう折り合いの付け方してるよね。

撮影:小林裕和


石山:お客さんも初めて見る人ばっかりだったら、やっぱりダンソン見なきゃ話が入っていかないとかあるんです。ダンソンブームの時は、ダンソン以外をやったときに「え~!」とか、マッサージのネタをやって試したいけど「ダンソンちゃうやん」とかがもう舞台上に聞こえてきて。

そういう時は、最初に「先にマッサージのネタやります、ダンソンはチャンスがあればやるので待っていてくださいね」って一言言うと、お客さんの集中力が持つんですよ。だからマッサージのネタを作った時が一番キツかった。どんなボケを書いてもダンソンを見たい客は最初から見てくれない。

番組に出させて頂く時に、「(ダンソンの)ヒョウ柄の衣装でお願いします」って言われるのも、ネタをやる企画だったらわかるんですよ。そうじゃなくてトークの時にヒョウ柄と動物。それいる?って。ロケの時だって片方動物連れてロケする奴なんておらんやん。そしたらいつもの掛け合いができへん。

だから関西で普通の格好してロケするときに「これがやりたかったんやな」って思いました。大阪だけは安心してネタができてたんです。大阪の人は飽きるのが早いからダンソンにもすぐ飽きる(笑)。「ダンソンはもうええよ」ってなってる状態で、マッサージのネタにいけたんです。でも東京ではずっとダンソンやったりして。

まぁでも、踊らずにショートニーブラみたいな全然違うニーブラのやつを作って、「すみませんけど、ダンソンやるにはやるんですけど、ちょっと違うパターンのやつ1回やらせてもらっていいですか?」ってテレビ側の人と折り合いをつけていってました。

藤崎マーケットの言葉で「ダンソン」ネタへの考えが変わった

石山:藤崎マーケットさんが「ラララライ体操」やって関西でレギュラー番組持って漫才で賞とって、それでも東京では「ラララライのやつ」とか「一発屋」とか言われて。でも僕らは実は、初めは(ダンソンの)ヒョウ柄の衣装で出るのを断ってたんですよ。

ネタするのもヒョウ柄で出るのも突っぱねてたとろこで、「いや石山、やったほうがええ。ここは折れよう。しょうがないよ、やるしかない」って言う藤田と、「嫌だ。そんなんしてたらほんまに一発屋になってしまうで」ってやりとりしてる状態の時に藤崎マーケットさんと話して。「誰か1人でも見たいと思ってくれる人がいるならヒョウ柄(ダンソン)をやるべきや」って言われたんです。

藤崎さんも地元のショッピングモールでラララライ体操をやらずに漫才をやったら、1人のおばあちゃんが「ライ見たかった」って言うたんやて。それで、1人でも需要あるんやったらそのギャグをやるべきだって。そこから俺ら2人とも考えが変わった。もう1人でもダンソン見たい人がいるんやったら99人飽きてようが一生懸命やるって。

撮影:小林裕和


藤田:単独ライブのVTRでこの対談を藤崎さんとしたんです。

石山:普通、ネタの合間のVTRって盛り上がるものにするのに。お客さん含め何百人が真剣。すごいドキュメンタリー流してもうて(笑)。

その頃助かったのが、笑い飯さんや千鳥さんのイベントに呼んでもらったりとか、いろんなところのファイナリストの方が呼んでくれて、「いやお前らには別のもあるやん。他のおもろいやん」って言ってくれて。ヒューマン中村さんは「もう世間に躍らされるくらいならお前から踊ってやれ」みたいな。そんな突き刺さる先輩のワードをいっぱいもらって、今のバンビーノがあるんです。

藤田:藤崎さんのときはそういう先輩がおらへんかったから、やるしかなかった。

石山:「ライしかなかった、そういう風に言ってくれる先輩がいなかった」って。だから何も知らないまま、テレビ側に言われるままライやっていたらそうなってしまったから、お前らは同じレールで走ってくるなと。

山﨑:かっこいい。