「わかりやすいドタバタではない面白さがある」(山寺)
山寺:前作『パパ、アイ・ラブ・ユー!』では、我々はかなりご好評をいただいたと思っているんです。レイ・クーニーの脚本って、どこの劇団がやっている批評を見ても「抱腹絶倒」「面白い!」って書いてあるんですよ。だけど、実際やってみるとこれを成立させるっていうのは難しいって実感するんです。
『パパ、アイ・ラブ・ユー!』はそれなりの手応えがあったと思っていたんですけど、翻訳者の小田島先生いわく、本国イギリスでは今作『Run for Your Wife』は、前作『パパ、アイ・ラブ・ユー!』の何倍も面白いと言われて、9年間もロングランしているような作品なんだそうです。
僕は実は『パパ、アイ・ラブ・ユー!』の方が全然わかりやすくて、今回は脚本的にあれほどウケなくてもしょうがないかな、と思っていたんですけど……。
水島:僕も同じこと思ってた!
山寺:もちろんイギリスと日本の文化の違いもあるとは思うんですけど、そこを言い訳には出来ないと思うので……面白く演じられれば相当面白くなる作品なんだと考えると、これは本当に大変だぞ、と。そういう意味では、難易度はマックスに近いんじゃないかな。
水島:いやぁー今の話、すごいショックだな。前作はわかりやすいところが多かったんですよね。水をかぶったり、女装してみたり……。でも、今回はそういうわかりやすいドタバタ部分は少ししかないし。だけど、今の話聞くと、今作は目に見えるギャグパートがどれだけあるかというので勝負してる脚本ではないんだよね。
山寺:会話劇ですよね、本当に。この発言が、こっちの人にはこう聞こえるけど別の人には違う意味に聞こえちゃう、というミスリード的なバランスが面白いところなんでしょうね。だから、わかりやすいドタバタではない面白さがあるんですよ。観てる方もすごく疲れるとは思うんですけど、でも、気持ちの良い疲れになればいいな、と。
ボーッと観てたらただわかりにくいだけになっちゃうかも知れないけど、我々もちゃんと伝えられるようにがんばります。かといって小難しくはなりたくない。幅広くいろいろな年齢層の方々に来てもらって、垣根なく笑ってもらいたいな、とは思っています。
声優だらけのキャスティングとなった理由
―― 今回のキャスト、スタッフについては、お3方で話し合われて熟考された形でしょうか。
山寺:そうですね、あとはネルケプランニングさんも含めて話し合いました。みんないろんな役者やスタッフさんをご存じなので。別に声優だけに限って決めたわけじゃないんだけど。
水島:そう。でも、結果的に声優さんだらけの舞台になったね。
山寺 別に意図したわけじゃないんですけど、せっかくならば一緒に仕事をしたことがあって人柄をわかっている人とやりたかった。
水島:もちろん役柄ありきなんですけど、同じくらい“人柄”というのも大事な要素だったんですよ。
山寺:もしこれが別の仕事だとしたら、誰とだってベストを尽くしますけど……でも、自分たちの主催公演で、自分たちがやりたいことを集まってやっているので、無理をしたキャスティングにする必要はないかな、と思ったんですよね。
―― おふたりからすれば、この舞台は仕事というよりも自分たちが楽しむためのライフワーク、という意味合いが大きいわけですね。
水島:大きな意味で言えばそうですね。もちろん大変さもあるから、「楽しい」だけじゃないですけど。でも、やりがいのあることだったら、苦労するのも楽しいという部分もあるので。そのやりがいを実現するうえで、なるべくストレスフリーにしていきたいと思って、キャストの人柄や相性などを考えて決めたわけです。もちろん、人柄だけじゃありませんけど(笑)。
山寺:「いい人だけど芝居がなぁ……」って人とは、一緒に芝居やりたくない(笑)。本当に、我々のわがままにみなさんに付き合っていただいてる感じです。でも、絶対にみんなにとってもやりがいのあるものにしなきゃいけない、と思ってはいるので、気合いを入れてやっていきたい。
―― 観客側からも、期待の高まるようなキャスティングですしね。
山寺:それが一番です! お客さんが楽しんだか、そうでないかだけ。我々だけが成功だと思っても、お客さんがウケてなかったら意味がないので。お客さんに楽しんでもらえれば、我々も楽しいはずですから!