ムルカルビ(豚肉と豆モヤシの鍋) 全州

大ぶりの国産豚肉を食べやすいようハサミで切ってくれる

カルビといっても焼肉ではなく、豚すき焼きに近い鍋物。コチュジャン系の甘辛いタレで味付けした豚肉を、豆モヤシ、春雨、ネギなどといっしょに煮て食べる。ムルカルビのムルとはこの汁のことだ。

豚肉がたっぷり入っているところに、食都と呼ばれる全羅北道・全州(チョンジュ)のプライドと人情味を感じる。春雨とモヤシは無料でおかわりができるので、栄養バランスも心配なし。肉はかたまりのまま煮込まれ、食べごろになるとお店の人がハサミでジョキジョキと切ってくれる。

春雨には弾力があり、地元産の豆モヤシには少々煮てもシャキシャキ感が残っていて、口中のアクセントになる。スープがしみ込んだ豚肉はそのまま食べてもよし、また、豆モヤシといっしょにサンチュで包んで食べてもいける。

残ったスープにはごはんと海苔、野菜を加えてチャーハンにするのが定番だ。

 

ナムノカルビ本店
完山区豊南洞2街29-5 TEL:063-288-3525
11:00~22:00 無休

タッペクスク(丸鳥の水炊き) 江原道楊口郡

地鶏がたっぷり入ったペクスク45000ウォンは2~3人で食べるのにちょうどよい

週末、ソウルの郊外や地方の農村へ行くと、たいてい鶏料理の店に出合う。タッペクスクと呼ばれる丸鳥の水炊きは、その種の店の看板メニューで、ソウルのタッカンマリの原型ともいえる。

その土地ごとに特徴があるが、筆者の記憶にはっきりと刻まれているのが、韓国の北部、江原道の38度線に近い町、楊口(ヤング)郡で食べたもの。真冬、楊口市街から路線バスに乗り、雪の積もった山道を揺られること30分。

その店は「タバコ屋」というとぼけた名前の停留所のそばにあるのだが、半分雪に埋もれたようなプレハブ小屋にたどり着いたときは、そこが人気俳優ソ・ジソプの訪れた店とはとても信じられなかった。店名を「チョンスコル」という。

地鶏とともに煮込まれているのは、高麗人参に似たキバナオウギという生薬や、正体不明の小枝のようなもの、それにナツメやクリ、ジャガイモなど。見た目は少々いかがわしいが、煮立ったスープをひと口すすってびっくり。

ほのかな漢方の香りがすがすがしく、絞めたての鶏の力強い旨味とともに、“山の気”をいただいているような充実感で満ちてくるのだ。

鍋だけではない。つきだしにもこの辺でとれた山菜がたっぷり使われていて、飽きずに楽しむことができた。もちろん、肝臓によいとされる薬草コンドゥレナムル(高麗アザミ)をたっぷりいただいたことは言うまでもない。

 

チョンスコル
江原道楊口郡方山面松峴里70 TEL:033-481-1094
11:00~20:00 日曜休

フォトギャラリー体の芯からあったまる!絶品韓国鍋メニューを写真で見る
  • 干したスケトウダラは、たんぱく質やカルシウムが豊富な健康食品
  • スケトウダラだけでなく、キノコ類もたっぷり入っているので40000ウォンはお得感がある
  • 冷めにくい土鍋で煮込まれたウンポッチリ10000ウォン
  • 「済州アジュマネチッ」のカルチチョリム(中)40000ウォン
  • 「群山食堂」のペカプタン(大)60000ウォン、(中)50000ウォン

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。