2016年の131日にNHKで放送された番組が、放送後、視聴者から「涙が流れて仕方がなかった」、「こういう情報をもっと早く知りたかった」、「肩の荷が下りた」と大きな反響を呼んでいたのをご存知でしょうか。

それは「NHKスペシャル ママたちが非常事態!?~最新科学で迫るニッポンの子育て」(NHK総合)という番組で、多くの声を番組スタッフに送ったのは他でもない、日本で子育てをする、もしくは子育て経験済みの母親たちからでした。

まさに、「ハピママ*」をご覧になっている方々と同じ状況のママたちに大きな影響を与えた番組が、一冊の本になったのでご紹介します。

番組『ママたちが非常事態!?』誕生のきっかけ

番組を企画したのは、NHK科学・環境番組部ディレクターの小林欧子さん。小林さんは30歳のときに出産し、初めて目にする新生児を前に困惑し「私はなぜ、子どもを育てるのだろうか?」と疑問を抱いたそうです。

「些細なことですぐクヨクヨして、バカみたいにイライラしたり、涙が出たり不安になったりする」という、子育て中に感じる“奇妙な気分”に対して「どうして人間の母親はただひたすら自分を責めてしまうのか? そもそも育児がこんなに大変なのはなぜか?」という気持ちが湧きあがったことが出発点だったそうです。

子育てに関する情報は、個人の意見や時代ごとに異なり、何が正しいか言いきることが難しいものです。番組「NHKスペシャル ママたちが非常事態!?~最新科学で迫るニッポンの子育て」は、これまで経験則で語られることの多かった子育てを、進化、脳科学、分泌学、動物行動学、発達心理学など「科学の目線」からひもといた新しい切り口の特集番組です。

企画が始まってすぐ、番組スタッフは、NHKの会員サイト等で03歳の乳幼児を育てる母親を対象に、子育ての悩みを聞き集めました。

「子育てが楽しくない、ツラいと思ったことはありますか?」という質問に答えた868名中、9割の母親から「いつも」「よくある」との本音が集中し、小林さんは「ニッポンのママを追いつめている子育ての苦難、それは人類の長い歴史の中で初めて直面するほどの非常事態」と思い知ったと言います。