1月に一斉スタートした2017年の冬アニメも、折り返し地点を通過し、終盤戦に差し掛かっている今日この頃。筆者も快作から意外な掘り出し物的な作品まで、色々と今期もお気に入りの作品ができました。

その物語の結末を楽しみ半分、寂しさ半分な心持ちで待ち構えています。

今回、偏愛するアニソンは、こちらも今期の人気作の一つである『幼女戦記』から、エンディング曲の『Los! Los! Los!』(ターニャ・デグレチャフ(CV:悠木碧))です。

兎にも角にも、先ずは、完成度の高いバンドサウンドを偏愛したい

鍵盤とストリングスを加えたバンドサウンドによって構成をされているこの曲。何よりも、躍動感に溢れた鍵盤と弦楽器の音が楽曲に厚みを生み出しており、更に、アップテンポな曲調が問答無用でリスナーをアゲてくれる"ガツン"とくるロックナンバーとなっています。

各楽器に注目をしてみると、先ず、耳に残るのがドラムの音です。タイトながらもドカドカビシバシと叩くビートの効いたバスドラムとタムの音が何とも小気味よく、楽曲から溢れ出す疾走感の根幹を成しています。

© カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会

また、メロディの良さもこの曲のチャームポイントの一つです。音階の関係なのか、どこかゴシックなムードを感じさせる曲調には、官能的な艶めかしさがあり、加えて、メタリックな要素すら感じられるラウドなサウンドが、この曲を一度聴いただけで忘れられないインパクトのある楽曲に仕立てているのです。

その一方で、リスナーのテンションを上昇させていくサビのメロディは、エモーショナルでドラマティックな手触りを有しており、ハードなサウンド一辺倒で終わらない辺りに、この曲の強さが感じられます。

何はなくとも、元のメロディの完成度に加えて、ロックなアレンジがとても上手くいっているなという印象を与えてくれる楽曲です。聴き手に音楽的な快楽を与えてくれる巧みな構成と安定感のある演奏力は、この曲に触れる上で是非とも注目をしていただきたいポイントです。

何はなくとも悠木碧の存在感! 幼気な歌声とラウドな音の同居が最大の魅力!

そして、この曲の一番の聴きどころは、何といっても「ターニャ・デグレチャフ」役を務める悠木碧さんの歌声です。

幼気で、しかし、他方でコケティッシュな響きを併せ持つ悠木さんの歌声は、この曲に特別な個性を与えています。

また、悠木さんの甘い歌声に反して、冷酷無比な言葉が続く歌詞も、この曲のおもしろいポイントです。アジテーション風の台詞パートが間奏部分ではなく、歌メロの時点で顔を出してくるのもユニークですし、ドイツ語というJ-POPやアニソンでは、なかなか耳にしない言語を歌詞に使用している点も目を引きます。

そして、それらが、前述した力強いバンドサウンドと結合し、渾然一体となった時に生まれる異色のアンサンブルこそが、『Los! Los! Los!』が持つ何よりの魅力です。ラウドなバンドサウンドと剣呑な歌詞、そして、愛らしい悠木碧さんの声。それらが並び立つアンビバレンツな同居感こそが、本作の最大の肝と言えます。

ちなみに「Los」とは、ドイツ語では「さぁ」「解き放つ」「行け」などの意味を持つ言葉で、それを3つ並べたことでミリタリー作品で良く見かける「GO!×3」や「Hurry!×3」のようなニュアンスが含まれています。これを頭に置いて聴くと、曲と歌詞の魅力がより伝わりやすくなるでしょう。

この曲を声の低い女性声優さんや男性声優さんが歌ったとしたら、曲の雰囲気は全く違うものになっていたことでしょう。

きっと、もっとブルータルでメタリックなエッセンスが全面に出て、ずっとヘヴィなサウンドに聴こえていたはずです。しかし、そこは悠木碧さんの歌声があってこその『Los! Los! Los!』であり、そのアンバランスなようでいて、その実、絶妙なバランス感覚で成り立っている美しさが、リスナーの感性を大いに刺激するナンバーです。

ソロアーティストとして、そして、竹達彩奈さんとの音楽ユニット「petit milady」として、或いは、この『Los! Los! Los!』のようにキャラソンという形で、精力的に音楽活動も行う悠木碧さんの充実具合が伝わる快作として、様々なリスナーに届いて欲しい楽曲です。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。