ライブやスポーツとともに、3月上旬から演劇界も自粛が続いている。現在も先の見通しは立たず、業界は疲弊するばかり。そんな状況を受けて、演劇界を救うべく、数々の新規プロジェクトが発足している。エンタメは不要不急に当たるものかもしれないが、生きていく上ではなくてはならないものだと筆者は思う。だからこそ、演劇・舞台の灯はともし続けたい。そのために、今私たちにできることとは何か。ここでは、現在、企画進行中の支援プロジェクトを紹介する。(※紹介する情報は、5月7日現在のもの。情勢によって変化する可能性あり)
舞台専門プラットフォーム「シアターコンプレックス」
演劇プロデューサーの松田誠氏を発起人に、新たな舞台専門の配信サービスを立ち上げるプロジェクトで、舞台の火を消すことなく、舞台を楽しみにしている観客、さらにはキャスト、クリエーター、スタッフ、主催者などを守り、未来のエンターテインメントを豊かにするために立ち上がったもので、既存公演の映像配信や、今後上演される公演のライブ配信、さらにはオリジナルコンテンツ配信を目指す。オリジナルコンテンツでは、舞台裏まで楽しめる、さまざまなバリエーションの企画を展開予定とあって、期待が高まる。
プロジェクト発足に当たって、5月1日からはクラウドファンディングもスタート。さらに、クラウドファンディング終了の6月7日まで、公式サイトで「応援トークライブ」も配信中だ。トークライブでは、松田氏と日替わりでゲスト出演する俳優・演出家たちのここでしか聞けない貴重なトークが展開される。
舞台芸術を未来に繋ぐ基金 Mirai Performing Arts Fund
新型コロナウイルスの感染拡大によって活動停止を余儀なくされた舞台芸術に携わる出演者・クリエーター・スタッフに対して、今後の活動に必要な資金を助成する基金。1億円を目標金額に、「MotionGallery」内に募金用サイトを立ち上げた。同プロジェクトは、クラウドファンディングとは違い「公益基金」になるため、税制優遇措置を受けられる。
また、「MotionGallery」でのプロジェクト終了後も基金は存続し、今後の舞台芸術界や社会に役立つ活動を行う。プロジェクトには、演出家・脚本家の板垣恭一氏や俳優の伊礼彼方をはじめとした数多くの俳優、クリエイターらが賛同し、支援の輪が広がっている。
「うち劇」
作品を発表する場をなくした俳優や演出家が安心できる環境で芝居をできるプラットフォームの設立を目指し、BS TBSなど3社で作る「うち劇」。俳優らが自宅や事務所など別々の場所からオンラインで演じ、有料で「ネット配信舞台」が配信される。
これまでに、第一弾公演「マトリョーシカの微笑~刑事は二度死ぬ」(出演:染谷俊之、平野良、赤澤燈)を4月25日、第二弾公演「振り向くな、後ろに未来はない」(出演:佐藤流司、良知真次、近藤頌利)を5月5日、第三弾公演「刑事×刑事」(出演:凰稀かなめ、染谷俊之)を5月6日に配信し、大成功を収めた。同公演では、上演後にファンからのコメントに応える形で、観客が楽屋に行った形のファンサービスも行われ、配信ならではの楽しみも提供している。
小劇場エイド基金
演劇界で危機的状況に陥っているのは、俳優や制作スタッフだけではない。多くの劇場の収入が絶たれた状態にあり、緊急の支援を必要としている。そこで、ステージチャンネルとサンモールスタジオが発起人となって、小劇場を守ることを目的に立ち上げられたのが同プロジェクトだ。
6月5日まで「MotionGallery」内でクラウドファンディングが行われており、集まった金額は、手数料などを差し引き、支援先の劇場に均等分配される。俳優の八嶋智人や篠井英介といった俳優のほか、演劇関係者も多く賛同。また、別プロジェクトも連携し、演劇界で一つの動きを作ろうと活動している。
配信型演劇フェスティバル「Ohineri」
活動の場を失ってしまっているエンターテイナーに対し、活動の場を作りたいという思いから誕生した同プロジェクトは、無観客で行われるフェスティバルを、LINEのライブ配信アプリ「LINE LIVE」で配信する。視聴者はアプリ上で「応援アイテム」を送ることができ、直接的に気に入った作品やクリエーターを支援することができる。参加団体は、広く公募され(現在は募集終了)、多数の作品を5月26日~31日に配信予定。
演劇支援プロジェクト SAVE THE THATRE
特設サイト「演劇支援プロジェクト SAVE THE THEATRE」で、舞台作品を映像化したものを有料配信し、その収益の一部を新型コロナウイルスの影響によって公演が中止となってしまった団体に配分するプロジェクト。アップロードされている作品は、基本的に一作品300円で視聴でき、ほかに「投げ銭」での寄付も受け付ける。
現在、演劇、ミュージカル、狂言など多彩な作品がアップロードされており、「STAY HOME」を充実させるためにも最適な企画だ。売り上げが全額演劇支援に寄付されるチャリティーTシャツも発売されている。
「STAGE@HOME~おうちで楽しむ演劇~」プロジェクト
演劇公演が中止・延期を余儀なくされ、 活動の存続が危ぶまれている劇団や役者をサポートするプロジェクト。惜しくも“幻の公演”となってしまった演劇の台本を舞台クリエーターから預かり、 文章・写真・イラスト・音楽・映像などが投稿できるメディアプラットフォーム「note」上に転記し、 有料公開によって資金調達をサポートするサービス「the SCRiPT」をスタートした。普段、一般の観客が目にする機会のない台本を読むことができるのは、貴重な機会となるだろう。(嶋田真己)