“思いやり” “愛情” “優しい心”
幼い頃からこれらを育ててやりたいですが、言葉で「優しくしなさい!」「相手のことを考えて、思いやりの心を持ちなさい!」と言い聞かせても、なかなか身に付くことではありません。
いったい、どのような育て方をすれば“思いやりのある優しい子”になるのか、『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子がお話しします。
人の痛みを同じようには感じられないのが人間
テレビで、貧しい国で餓死している人のニュースが流れます。それを横目で見ながら夕飯を食べる家族。
そのとき、「美味しいご飯を食べているなんて、とんでもないことだ」とはならず、夕飯の時間は過ぎていきます。それが当たり前の日常の光景です。
貧しい国の飢えよりも、自分の指先のひび割れに気持ちが行ってしまうのが人間ですね。
これは普通の感情なので、「お腹が一杯で食べきれない」と訴えている子どもに、「飢えている人もいるんだから、ご飯を残してはダメ」と叱ってはならないと思うのです。
人の痛みを同じようには感じられないのが人間ですが、では、親として子どもにどのような言葉がけをすれば、“思いやりのある優しい子”に育つのでしょうか。
特にシングルエイジと言われている0歳~9歳の子どもが受ける、親の言葉の影響はとても大きいものです。
次のようなケースの場合、特に注意して発言するようにしてください。
実際にあったケースをご紹介します。
子どもの“優しい心”を育てよう。気をつけたい、質問に対する親の回答
「あのおじさん、どうして箱の中で寝ているの?」
段ボールでできた小屋に寝ているホームレスを指して、子どもがママに質問しました。
子ども「どうしてあのおじさんは段ボールに寝ているの?」
母親「小さいうちからちゃんとお勉強しなかったから、いい学校に入れず働く場所もなくなったのね。だからお金がなくなって貧乏になってしまって、ちゃんとしたお家に住むことができなくなったのよ。だから、あなたはしっかり勉強しておかないとダメなのよ、決してあのおじさんのようにならないようにね!」
この対応では、「ホームレス=勉強しないで怠けていたから貧しくなった」という偏った考えが子どもにインプットされてしまいます。
こんなときは一体、どう答えれば良いのでしょうか?
次のように、淡々と事実を伝えれば良いのです。
子ども「どうしてあのおじさんは段ボールに寝ているの?」
母親「あそこがおじさんのお家なのね」
子ども「どうしてあそこがお家なの?」
母親「ケガや病気になって働けなくなって、お金を手にすることができなくて、住むお家がなくなってしまったのかもしれないね。夏は暑くて冬は寒くて大変でしょうね」
ここで「だから、あんな風になっちゃダメなのよ」などの“余計な一言”は必要ないと思うのです。
「どうして僕だけ○○小学校に入学できたの?」
これは筆者が実際に目にした光景です。
私立や国立の小学校受験の合格発表の後、10人の年長児の中で一人だけ合格した子がいました。
子ども「どうして僕だけ合格したの?」
母親「それはあなたが一生懸命勉強して、頭がいいからよ。お友達は勉強ができなかったから合格しなかったのね」
翌日、その子が幼稚園でこんな風に叫んでいました。
子ども「僕はしっかりお勉強をして、頭がいいから○○小学校に入学できるんだ。みんなは勉強を一生懸命しなかったから不合格だったんだ」
こんな言葉を子どもがゼロから考えて言うはずはなく、親の言葉を真似して言っているのです。
他人を見下すような発言を親がしていると、子どもの優しい心は育ちにくいでしょう。