『古見さんは、コミュ症です。』の古見硝子

コミュ症ヒロインが登場するコメディ漫画といえば、この『古見さんは、コミュ症です。』も挙げないわけにはいきません。『週刊少年サンデー』で好評連載中の作品で、コミックスも現在までに3巻がリリースされています。

生徒の個性を最大限に尊重する余り、アクの強い生徒ばかりが集う「私立伊旦高校」に通う古見硝子は、周囲から羨望と憧れの眼差しを向けられる美貌の持ち主ですが、実は、他人との日常会話すらままならない重度のコミュ障。それでも、友達が欲しいと願う彼女の真意を知った主人公は、彼女の友達作りに力を貸すことになりますが……。

そのタイトルの通り、ヒロインである古見さんのコミュニケーション不全っぷりと、端整なルックスとのギャップに笑いの主軸を置いた漫画作品であり、全編に渡って、硝子さんの特異なキャラクターと、彼女の力になろうとする男子生徒の奮闘によって巻き起こるドタバタ劇が描かれます。

古見さん以外の登場人物も、いずれも極端に性格が誇張されたキャラクターばかりで、全体的にギャグのテイストが強い作品です。その為、悲壮感や暗い雰囲気はほとんどありません。"コミュニケーション障害"というデリケートなテーマを扱いつつも、カラッと明るい学園コメディに仕上がっているのです。

一方で、笑いの中にも古見さんと主人公の心の触れ合いや、ドタバタ騒動を通して徐々に増えていく仲間たちなど、ハートウォーミングな要素もあり、読者を引き込むドラマ作りの巧みさ見逃せない作品となっています。

コミュ障というネガティヴな要素を逆手にとり、笑いと魅力的なヒロイン像を生み出したユニークなコメディ漫画です。

『ハピネスチャージプリキュア!』の白雪ひめ(キュアプリンセス)

プリキュアシリーズの放送開始10周年を記念して制作された『ハピネスチャージプリキュア!』は、様々な新要素を盛り込んだ意欲作としてファンに知られる作品です。

特に、主人公の他にも世界中に複数人のプリキュアが存在しているという斬新な世界観や、恋愛要素に重きを置いたドラマ作りは、本作のオリジナリティに大きく寄与しており、シリーズの中でもユニークな要素を数多く持つ冒険作となっています。

プリキュアに変身するヒロインたちもそれぞれにキャラクターが立っているのですが、キュアプリンセスこと、白雪ひめは特にその内面的特徴が取り沙汰されることが多い女の娘です。

元々は、「ブルースカイ王国」という王国のお姫様であり、お城の中で何不自由なく過ごしてきたのですが、ある日、敵組織の侵略を受けて王国は陥落。唯一の生き残りとして、囚われの身となった両親や国民を開放すべくプリキュアとして戦いを挑むことを決意します……と書くと、とてもカッコ良いのですが、実際のところは未だまだ実力が追いついておらず、戦闘では連戦連敗。

しかも、極度の人見知りの為、まともに人と話すこともできず、一緒に戦う仲間どころか友達すらいない、所謂「ぼっち」な娘なのです。その不器用さは相当のもので、色々と人間関係をこじらせてしまった結果、物語の序盤では、何と他のプリキュアと仲違いをしていた(というか、敵視されていた)程です。

しかし、彼女も仲間と出会い、共に力を合わせて困難を乗り越えていくことによって、人間的にも大きく成長を遂げます。序盤で度々描写されていた性格面での短所や、人見知りも徐々に克服し、前向きで明るい人間性と社交性を得るに至るのです。

ひめのように、内気な娘や人見知りをする娘も登場するのが、『プリキュア』シリーズのおもしろさであり、奥深さ。こういったキャラクターたちによるドラマは、あらゆる年齢層の人々に届く豊かなメッセージ性に満ちています。白雪ひめは、そうしたシリーズの前向きな作品性を端的に示してくれているキャラクターなのです。