「オワコン騒動」はなぜ起きた? 日本のお笑いの“多様性”

太田:結局あの論争もね、誤解だらけになっちゃっている空気の中で「日本のお笑いが政治を茶化せない」みたいなことを、思い込んじゃったんじゃないかな、と思うんだよね。

ただ政治家のモノマネしてるだけの奴らを、唯一それができてるみたいな、またそんなくだらないことを言うからね。あんなつまんない奴らを、さぁ。

田中:まぁまぁまぁ。つまんないかどうかは、人によるんだろうけど。

それでこれは……ものすごく昔から思っていることなんだけど。

ジャーナリストとか、いわゆる知識人的な人って、アメリカやイギリスの、特にコメディアンとかが政治のネタをするのが、すごくハイレベルで、いわゆる“高尚”なお笑いだっていう風に、非常に、安易に思っているんだよね。

でもそれは、僕から言わせると、極めて単純な、幼稚な考え方なんですよ。

お笑いに関しては、断片的にそういう部分もあるのかもしれないけど、まー視野が狭いというか。

「知らねんだ」って、そんな風に思っちゃう。

これだけいろんなお笑いを見てきた人間からしたら、知らな過ぎるんですよ。

撮影:小林裕和

それでちょっと外国に行って、時の政権をステージで「ワーッ」と叩いて、客がそれを見て「ウワーッ」て盛り上がるのを「アレがやっぱりすごいね!」って。

そういうのがカッコいいのも分かるし、実際そういったカッコいい部分もあるんだけど、僕からしたらそんなことはもう分かっていることだし、すごい安易だし。

でもそういうところまでは、いわゆる知識人の人たちは知らないんですよね。

あるいはジャーナリストの人たちが、ラジオとか聴いてるとたまに出てくるんですけど、そういうの、言うんですよ。「向こうのお笑いはレベルが違う」とか。

太田:あー、アイツらもな。

田中:だけどそれは、ほんっとに申し訳ないけど、知らな過ぎるっていうか。

「お前、笑ってないだろ?」っていうか。

「ほんとにおかしいか、それが? 一番おもしろい?」ってね。

どう考えても、日本の、この多様性のあるお笑いの方がおもしろいんですよ。

それは、日本の“ごはん”がおいしいのと一緒だと、僕は思ってるんですけど。

とどのつまりは「ハンバーガーうまいよ」って、「やっぱりアメリカはマクドナルドだね」って言っているのと同じなんですよ。

実はそうじゃないんだっていうのはね、これは、なかなか伝えづらい。

太田:馬鹿なやつには分かんない。

田中:そうそう、つまんないやつには分かんないってことになっちゃうから。

要は舌が肥えてないやつが、なんかちょっといいのを1個食って「本場のイタリアンが、やっぱりうめえな」って。

でも「いやお前、日本のイタリアンいっぱい食ってみ? 実はうまいよ」っていうようなことって、いっぱいあるじゃないですか。

でもそういうのって、日本の多様性を理解していない人には、分かんないんですよね。

太田:あんな“国際派”然としたジャーナリストの連中なんて、絶対クラスで、つまんないヤツだと思うよ(笑)

田中:だからー、まぁ、そうなんだけど(笑)

でもやっぱり、特にバラエティーとかにも出ているような人で、いろんなことを分かりやすく、嚙み砕いて話すような人の発言だとなおさら、すごい影響力があるからね。そういう知識人みたいな人たちが言うことって、聞く方も「正しいんじゃないか」って思っちゃうから。

太田:余計なこと言ってくれたよね、ほんと罪作りだよ。

田中:もちろん、全部は否定しないからね。一理はありますよ。

だけど「それだけじゃないのになー」っていう感じ。

一刀両断に決めちゃっているけど「あなた、それ知らないから言ってるだけだよ」っていうこと、かな。

――先ほど「舌が肥えてない」というお話があったんですが、では日本のお笑いファンについては“舌が肥えている”ということなんでしょうか。