大人が泣ける映画として大評判
実は『カーズ/クロスロード』は、すでに公開されている本国アメリカで、大人が泣ける映画として、大評判となっています。
そもそも、『カーズ/クロスロード』は、どんな観客に向けて製作されたのでしょうか。
ヒントのひとつとして、『カーズ(1作目)』が公開されたのは2006年であり、すでに11年も昔である、という事実があります。当時、ライトニング・マックイーンのファンになった子どもたちは、今や立派な青年になっている計算です。
その親たちは、子育てにひと段落して、次の人生に向かおう、という段階でしょうか。
もちろん、長編アニメーション映画として、現在の子どもたちと、その親の存在を無視するわけにもいかないでしょう。
こうして考えると、10年以上の月日を経ての続編製作は、マーケティングのうえから考えると、相当に困難だ、という事実がわかります。
大人向けに作ったとしても子どもは理解する
実際、この疑問を、自身も4歳と8歳の子どもがいるという、共同製作のプロデューサー、アンドレア・ウォーレンにぶつけてみたところ、
「ターゲットは、大人も子どもも、全員です。仰るとおり、至難の業ではあるのですが。
もちろん、テーマとして「親」というのは、大きいと思います。キャラクターたちを、親としての自分たちの経験も含め、私たちのハートから作りあげていますし、(『カーズ/クロスロード』で重要な要素である)クルーチーフとレーサーの関係も、師弟関係、親子関係に似ていますしね。
けれども、映画のテーマは、より大きい・一般的なものであるべきだ、とも思っています。
『カーズ/クロスロード』では、大きなテーマは「チェンジ」です。大人にとっても、子どもとっても、「変化」というのは、通じる部分があります。
それに、大人が楽しめる映画を作っても、実は子どもも(親世代である私たちが)思っているより、遙かに理解してくれるし、楽しんでくれるというのも、また事実だと思います」
アンドレア・ウォーレンさんのコメントは、すでに試写を観た私の実感に、とてもしっくりくるものでした。
すべての人に向けて作った、とは言うものの、第一の観客は、子どもではなく、親以上の世代なのでしょう。
特に、「カーズ(1作目)」を観ていると、ラストのライトニング・マックイーンの決断に、驚きと感動があるという事実が、証左と言えると思います。
親として、我が子を連れて行きたくなる映画
そしてまた、私自身8歳と5歳の子どもがいますが、子どもでも楽しめるし、大人が思っているよりも子どもは理解する、というのも、事実だと感じます。
もちろん、『カーズ/クロスロード』には、人生経験があるからこそ響く、という要素もあり、もしかしたら、大人が映画から受け取るメッセージを、子どもは完全に理解しないかもしれません。
それでも、親としては、子どもと一緒に観に行きたくなる映画なのです。アンドレア・ウォーレンさんに、率直に伝えたところ、
「(仰ったのは)まさに私たちが聞きたい言葉です。
色々なテーマを内包する作品でありながら、どれもが、それぞれにとって、なにがしかの意味があればいいと思っています。
それこそがアートの美しいところですよね。主観的に、いろいろな形で見てもらって、感動してもらえるというのが、私たちのゴールです」