現実の事件に触れる中で、気になったこと

WOWOW 『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』 12月5日(土)スタート(全10話、第1話無料放送) 毎週土曜夜10時よりWOWOWプライムにて放送 ©WOWOW/Warner Bros.Intl TV Production

──現実の事件に触れる中で、何か気になったことはありますか?

親族間の殺人が多いことですね。日本の場合、半数が親族間の殺人だそうです。

なぜかは分かりませんが、親、兄弟、子供を殺す事件が他の国に比べて多いのが日本。

そのあたりの感情も気になってはいますね。

──身内の事件のほうが未解決になりやすい、逆になりにくいなどのパターンはありそうですか?

どうなんでしょう。実際はさておき、「コールドケース」の物語にはしやすいかもしれないですね。

中国残留孤児のエピソードでは、親しい人間同士による秘密の共有が鍵になっています。

そこに刑事が入り込みにくかったからこそ、未解決になってしまった…というのはあるかもしれません。

秘密があるのは刑事たちの目にも視聴者の目にも明らかなんですが、それをどう切り崩すかが問題。

秘密を共有する者同士の絆がどれだけ強いのかはもちろん、共有する人数にもよりますし。あくまでも「コールドケース」の場合は、ですけど(笑)。

シーズン中1~2話は、理由なき犯罪を取り上げる

WOWOW 『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』 12月5日(土)スタート(全10話、第1話無料放送) 毎週土曜夜10時よりWOWOWプライムにて放送 ©WOWOW/Warner Bros.Intl TV Production

──ここまでのお話で事件と人間ドラマの関係が見えてきましたが、その一方、人間らしさのない“理由なき犯罪”も扱っていますね。

シーズン中1~2話は、理由なき犯罪を取り上げるようにしています。

シーズン3で言うと、第5話に出てくる連続監禁魔は同情の余地ゼロですし、共感もできないですし、絶対に理解できません。ある種のサイコパスですから。

──理由なき犯罪のほうが、理由がなくて突き止められない分、未解決事件にしやすそうな気も。けれど、“理由”が人間ドラマとして描かれるのが「コールドケース」で…(笑)。

難しい問題ですよね(笑)。確かに、理解できない犯人のほうが、事件を解決しにくいのかもしれません。

でも、個人的にサイコパスの話はあまり好きではないので(笑)、難しくてもヒューマンなものをやりたい気持ちが強いです。

ただ、好きなものばかりやると偏りが出てきて、「あっ。母性の話だらけになっちゃった」なんてことにもなりかねない。

なので、最初の話に戻りますが、チームでのディスカッションが大事になってくるのかなと思います。

WOWOW 『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』 12月5日(土)スタート(全10話、第1話無料放送) 毎週土曜夜10時よりWOWOWプライムにて放送 ©WOWOW/Warner Bros.Intl TV Production

まだ扱っていないけれど、実は扱ってみたい本国版エピソード

──まだ扱っていないけれど、実は扱ってみたい本国版のエピソードはありますか?

やりたくてもやれなかったものが、いくつかあります。刑務所の跡地から囚人服を着た遺体が発見されるエピソードは、事件にまつわる愛のドラマに惹かれていつかやりたいなと思いました。

あとは、余命の限られた親と障がいを持つ息子のエピソードもすごく取り上げたかったんですが、あまりにも切ない物語で。

やりたいなと思いつつ、「今度にしよう」と(笑)。あまりにも救いのない事件なので、覚悟が必要なんですよね。いつか、覚悟を決めるときが来るかもしれないです。

──やはり“救い”は未解決ミステリーを作る上で大切ですか?

私個人の意見ですが、何かしらの救いはほしいです。後味がいいと言い切れるドラマではないので、何か1つでも、どんなに小さくてもいいから感動と救いがほしい。

コロナ禍を経て、そういった気持ちがより強まったのかもしれないです。ポジティブさがないと、エンタメは作れない。

そんな思いも自分の中にあるんじゃないかなと感じています。

捜査を行う警察側の視線、事件に関わる当事者たちの視線が濃密に絡み合い、上質なミステリーとして成り立っている「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」。

そのドラマ制作の裏側には、未解決事件を単なる事件として捉えるのではなく、事件の周りでうごめく人間模様や事件を引き起こした社会背景に目を向ける作り手たちの真摯な眼差しがあった。

臓器移植法の改正からデートレイプ、中国残留孤児の問題まで、デリケートなトピックを果敢に取り上げ、身近さすら感じさせる未解決ミステリーへと変換してきた作り手の手腕に唸らされる「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」。

ドラマ本編を見れば、ワイドショーなどで取り上げられているあのスキャンダラスな事件も、共感を呼ぶ人間ドラマに見えてくるかもしれない。

WOWOW 『連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~』

12月5日(土)スタート(全10話、第1話無料放送)
毎週土曜夜10時よりWOWOWプライムにて放送

※過去シリーズ一挙放送

『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』12月1日(火)、2日(水)全10話一挙放送
『連続ドラマW コールドケース2 ~真実の扉~』12月3日(木)、4日(金)全10話一挙放送

監督:波多野貴文、内片輝、守下敏行
脚本:酒井雅秋、瀧本智行、野木萌葱、吉田康弘、蓬莱竜太、瀬々敬久
音楽:村松崇継
出演:吉田羊、永山絢斗、滝藤賢一、光石研/三浦友和
特設サイト https://www.wowow.co.jp/drama/original/coldcase3/
番組公式インスタグラム @coldcase_jp
©WOWOW/Warner Bros.Intl TV Production

 

映画&海外ドラマライター。ファッション誌、映画誌などで作品紹介記事、インタビュー記事などを執筆。アメリカやイギリスのドラマを長らく愛してきたのに加え、最近は韓国ドラマの魅力にもハマリ中。