コロナ禍の影響で学校開始が大幅に遅れた今年、早く学校に行ってほしいという親の想いとは裏腹に学校に行けなくなってしまういわゆる「不登校児」が増えています。
以前は不登校にマイナスのイメージを持つ人も多かったですが、不登校はそれほど珍しいものではなくなりました。学校側の不登校への理解も、ゆっくりですが着実に進んでいます。
その背景には2016年には教育機会確保法が施行され、不登校支援のあり方が変わってきていることがあります。
学校に行けないことで罪悪感を抱えている親子も多いかもしれませんが、不登校は決して悪いことではありません。学校に戻そうと焦るのではなく、不登校なりに学校とうまく関わっていく方法を実例と共に紹介していきましょう。
不登校支援は学校に戻ることが前提ではない
過去に不登校は登校拒否と呼ばれていた時代がありました。不登校と呼ばれるようになった今でも、登校拒否という言葉ほどではないにせよ、まだ「学校に行けないちょっと困った子」というイメージを持つ人はいるかもしれません。
ですが、先日文部科学省が発表した調査によると、令和元年は小学生の120人に1人が、中学生の25人に1人が不登校というデータが出ています。しかも増加率は小学校では19%という高い数字に。コロナ禍の影響を受けた今年度はさらに数字が上がるのではとみられています。
2016年に施行された教育機会確保法には、不登校支援の定義として「学校復帰を前提とせず、子どもの社会的自立を支援する」とあります。つまり「学校に通うことがゴールではない」ということです。
実際「学校側から強く登校を迫られることはない」というケースも出てきているようです。
Iさんの息子さんは、小学校3年生からじょじょに学校に行けなくなりました。4年生のときは1日1時間だけIさんが付き添い登校をしていたそうです。今年5年生になりコロナが明けた後はしばらく1人で1日1時間登校を続けていましたが、夏休み明けには完全不登校に。
昨年度の担任の先生は経験が浅かったせいか、息子さんにこれといったアプローチをしてくれませんでした。幸い今年の担任は中堅のベテランで「学校に来なくてもちゃんと大人になれるよ」と不登校に理解を示してくれているといいます。
今は週1回、放課後に1時間担任の先生が勉強を見てくれたり、生活の様子を確認したりしてくれているそうです。子どもが担任の先生に会うことが苦痛でなければ、こういった形の支援は助かります。
行きたいときに行くスタイルでもOK
小学校に上がってすぐ2か月の休校の時期を過ごした後、数週間は学校に通ったものの、すぐに行き渋りが始まったAさんの娘さんのケースを紹介します。
学校に行かせようとすると「行きたいけど行けない」と泣く娘さんを見て、母親のAさんも強く言うことはできず、そのまま不登校へ。
学校とは担任の先生を通じてやりとりを続けています。学校からは今のところ「好きな科目だけでも」「給食だけでも」と言ってもらっており、好きな図工だけ受けて給食を食べて帰ったり、校外学習だけ参加したりしているそうです。
登校するかどうか、行事に参加するかどうかは娘さんが決めています。
今のところ、Aさんは娘さんがすぐに学校に戻るとは思えないため、気長に見守るつもりだと言っています。
「気持ちとしてはホームスクールに近いですが、娘が行きたいと言ったら行かせられるようにはしておきたいので、ホームスクールと学校のハイブリッドですね」
学校に行ったり行かなかったりする登校のことを「五月雨(さみだれ)登校」と呼びますが、この言葉にはどこか登校できないことをよしとしないイメージがつきまといます。
事実、五月雨登校というワードで検索すると「五月雨登校の克服の仕方」と出てきたり、対語として「安定登校」という言葉が挙げられていたりするのです。
それに比べてAさんの娘さんのケースは、学校に行きたかったら行くし、行きたくなかったら行かないというポジティブなスタイル。がんばってまで行くことを、親も学校側も強要することはありません。
好きな科目や特定の学校行事には興味を示す娘さんを「教室で一斉授業を受ける形式だけが苦手」とAさんは分析しています。
Aさんは「たまたま理解のある担任の先生でラッキーだった」と言います。それは裏を返せば、学校側の対応には地域差、もっといえば担任の先生や校長先生による違いがあるということです。それはそれで問題なのですが、今後、学校や教育委員会側に理解が進むことで解消されていくといいですね。