店じまいの早い居酒屋食堂
廣州街にはもう一軒、お気に入りの食堂『龍城號』がある。
こちらはどちらかというと夜の店なのだが、19時半という半端な時間に店じまいする。こぎれいな店構えからはわからないが、なんと創業百年を超える老舗だ。
シンプルで美味しい塩ラーメン風の切仔麺(チエズミェン)が有名だが、夕方になると地元の中高年や家族連れが集まり、テーブルにビール瓶を並べての宴会が始まる。
人気のつまみは豚モツ。さっと湯がいただけのコブクロや大腸は、ショウガを添えていただくと最高の酒のつまみになる。
日本と値段を比べるのは野暮だと思いつつ、180円ほどで新鮮なコブクロが食べられるなんて……と幸せを噛みしめる。
ハッピーアワーからシメの麺までこの店で完結できるのは大きな魅力だ。
艋舺の歴史と文化に触れる
グルメストリートの廣州街には、街の歴史博物館のような施設もある。廣州街を挟んで『龍城號』の向かい側にある歴史的建造物『剥皮寮(ボーピーリャオ)』だ。
日本時代から残るバロック式の建物はなんとも趣がある。ここは1990年代後半から修復や整理が始まり、2010年頃になってやっと知られるようになった施設で、小規模ながらも雑貨店やギャラリーなどがある。
隣接する『台北市郷土教育センター』も同じようにレトロな建造物だが、ここでは当時の貴重な歴史に触れることができる。
台湾の日本時代の小学校風景は、日本人なら誰でも驚くのではないだろうか。レンガ造りの古風な建物を背景にSNS用の写真を撮る人も多く、最近は人気が出ている。
龍山寺ととともに散歩コースに組み入れたい。
艋舺とは?
1970年代が全盛期だった艋舺(萬華)は、当時の台湾でもっとも賑やかな繁華街であり、上京者がこぞって目指す憧れの地だった。日本の東京で言えば上野・浅草のような街だ。
かつて艋舺北西部の華西街夜市にはヘビの生血を飲ませる屋台があり、その裏手の赤線地帯ではピンク色のネオン看板が怪しげな雰囲気を醸し出していた。
その辺りの雰囲気は以前本コラムで取り上げた台湾映画『モンガに散る』(台湾ロスを癒す「日本で楽しむ台湾」vol.1【話題の映画】)によく描かれている。
2月27日(土)は本コラム筆者・光瀬憲子の映画ドラマ吹替翻訳講座
コン・ユ主演の映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』やイ・ビョンホン主演『天命の城』、イ・ヨンエ主演のドラマ『師任堂、色の日記』などの韓国作品をはじめ、ネット配信されている北京語や英語コンテンツの吹替翻訳を担当した本コラムの筆者が、字幕翻訳とはひと味もふた味も違う吹替翻訳の仕事のおもしろさについて語ります。
アジアの映画やドラマに出てくる言葉に関心のある人や、得意な語学をいつか仕事に活かしたいと考えている人におすすめ。
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