もしも、魔王を倒した伝説の魔法使いが「お母さん」になったら?
そんな設定で、ファンタジー世界に現実の子育てにまつわる問題をうまくリンクさせ、子育て中の親たちを中心に支持を集めた漫画『伝説のお母さん』。2020年2月には前田敦子さん主演でテレビドラマ化もされ、さらに多くの人々の関心を呼びました。
そんな話題作の続編『伝説のお母さん つづきから』が発売! 今回も、キャラクターそれぞれの育児やジェンダーの問題、あるあるがそこかしこに散りばめられていて、共感し、くすっと笑いながらも何か考えさせられる内容になっています。
今回は、著者のかねもとさんに、続編を描くことになった背景や、新たな物語で盛り込みたかったメッセージなどについてお伺いしました!
—―2017年に『伝説のお母さん』が出版されて、ドラマ化にまで至るほど人気作品となりました。そのことで変わったことはありましたか?
かねもとさん:いろんなご縁があって、幅広いお仕事を体験させていただきました。いちばん変わったのは、仕事が増えたことであきらめていた保育所と学童の申し込みをして、自分の子どもたちがそれぞれに入れたことですね!
――続編を描くことになった理由があれば教えてください。
かねもとさん:ドラマ化がきっかけで、続編のお話をいただきました。
――前作のときに取材させていただいたのですが、その際「実はまだ描きたいエピソードがある」として挙げていた神官と拳闘士の合コン、シーフの夫との話や魔法使いと夫のなれそめなどは今回の続編で盛り込まれていました。前作で消化しきれなかったエピソードはすべて描けたのでしょうか。
かねもとさん:ありがたいことに、ほぼ盛り込めました!
一点、魔法使いの夫がここまでしっかりと父親業をこなすことになるまでの苦労は、もう少し描きたかったです。あとは育児あるある×RPGのような小さな4コマネタはたくさんストックがあるので、機会があれば……と思っています。
――前作に引き続き、現実世界の育児あるある、ママあるあるをRPG世界に落とし込んでいるのが見事で、しっかりファンタジーの物語になっていながら「ある~!」と共感できるエピソードばかりなのですが、特にこれは描きたかったというものはありますか?
かねもとさん:前作は「待機児童」をメインテーマとし、子どもがいながら仕事に復帰することの難しさを描きましたが、今回は「育児と仕事の両立」というところを描きたかったんです。
また、前作で「魔法使いほど能力があれば別だけど、専業主婦はここまで主張できない」という意見をいくつか見ました。確かにメインキャラクターたちは全員「伝説の人」たちで、能力が高くその力を求められる人たちです。
私自身、子どもが生まれてから仕事が軌道にのるまでは専業主婦のようなものだったので、家事育児にあまり関わらない夫や、社会の「お母さんはこうあるべき」という声に対し、「もやもやするけど、働いていない自分には何も言えない」と主張を飲みこんでいました。
だから「専業主ふも立派な仕事で、夫婦のあいだで立場に差があったり遠慮や不満を飲みこんだりするのはよくない」ということは、必ず伝えたいと思っていました。
――確かに、“専業主ふ”の描かれ方は印象的でした。他にも魔王の描かれ方など、前作とはまた違った要素もたくさんありましたよね。新たな物語で伝えたかったメッセージはどのようなものですか?
かねもとさん:前作は主人公を中心とした「能力のある人でも待機児童がいるだけで復帰できなくなる」という話でしたが、今回はルッキズム、女の人生と結婚、シーフや将軍のようないろいろな夫婦の形、男らしさ女らしさなど、それぞれの問題に触れました。
子どもを産んだ女性以外の、いろいろな立場の人を描きたいと思いました。