Ⓒあべゆみこ

「手づかみしない」「好き嫌いしない」「お箸を正しく持つ」「こぼさず食べる」など、子育ての中で、食事中にしつけなくてはならないことってたくさんありますよね。

でも、そんな食事のしつけはほどほどにしたほうがいいことも。

『1人でできる子になる 「テキトー母さん流」 子育てのコツ』の立石美津子が詳しくお話しします。

食事中のしつけ

食事中、子どもに教えなくてはならないことをざっと挙げてみました。

  • 手づかみしない
  • 遊び食べしない
  • 食器をおもちゃにしない
  • 好き嫌いしない
  • 残さず食べる
  • お箸を正しく持つ
  • 左手はテーブルの上に
  • 犬食いしない
  • こぼさず食べる
  • 食べ終えるまで椅子に座っている

親にとっては食事時間はしつけることが満載なので、「自分の食事は子どもが食べ終わってからゆっくりと」と考えて、子どもと親の食事時間を別にしている人も多いでしょう。

でも、子どもにとっては毎日毎日、見張られて叱られながらの食事はちっともおいしくも楽しくもありません。

食事で一番大切なことは「好き嫌いなく残さず食べる」「お行儀よく食べる」ことではなく、「食事をすることは楽しいことだ」ということを体験させるということではないでしょうか。

大人になったら食べられるようになる

大人になって、レストランで走り回っている人や食器を投げる人はみかけません。ボロボロこぼす人もいません。

子どもが幼い頃、親はつい「世の中にはおいしいものがたくさんあるのだから、もっと食事の幅を広げてほしい」、「同じものばかり食べていると、栄養が偏る」と心配になります。でも、人参が嫌いだったらカボチャなどの代用品を使えばよいのです。

小さい頃は味覚が大人より強く感じられるので、「子どもの頃苦手だったものが、大人になったら意外に食べられるようになった」という人も多いと思います。

成長と共に味覚の幅が増え、大人になって「あれも食べられない、これも食べられない」という超偏食の人はそう多くはありません。

もちろん、好き嫌いなく厳しくして“なんでも食べられる大人”になることはありますが、嫌いなものを口に押し込まれた経験がトラウマになり、強制されたことによる恐怖や嫌悪感により苦手になることだってあります。

また児童精神科医は「一時的に無理に食べさせることに意味はなく、不安感からくるたくさんのこだわりを緩和し、本人にとって将来を生きやすくすることが一番の目的。

『この人の薦めた物なら食べても大丈夫だろう』と安心できる関係を、時間をかけて作ることがスタートになる」と言っています。(帆足暁子副院長の話より)

保育園で見た光景

筆者が保育園で働いていたとき、「残さず食べよう!お皿をピカピカにして!」と1~2歳児に対して強要していた保育士を見てきました。

「自分がそれをされたらどう感じるか」も考えず、残したおかずを白飯や味噌汁にドバっと入れて食べさせていた保育士もいました。そして、連絡帳に「完食しました」と書きます。(親はこの一文で安心します)

子どもは大好きな白いご飯は白いまま、味噌汁はそのまま飲みたいでしょう。嫌いなものを入れられて食べさせられたら拷問です。