コロナ禍という困難に全世界が直面した2020年。
そんな中でも未来へ“希望”をつないでいこうと、エンタテインメントの街・日比谷で7月に立ち上がった「HIBIYA & HOPE PROJECT」。
その活動のラストを飾る企画として、日比谷に深いゆかりを持つふたり、演出家・宮本亞門と音楽プロデューサー/ベーシスト・亀田誠治の対談が実現!
ここでは、「HIBIYA & HOPE PROJECT」のYouTubeチャンネルで公開された対談の様子を、ダイジェストの形で紹介&解説する。
この日が初対面にもかかわらず話が進むにつれ共通点が判明し意気投合したふたり。
彼らが日比谷の街に抱く思いはもちろんのこと、コロナ時代におけるエンタテインメントのあり方まで、興味深い対談になった。
ふたりと日比谷の関係、ふたりから見た日比谷
銀座生まれで、幼少期から日比谷であらゆるエンタテインメントに触れてきたという宮本亞門は、日比谷の街を「ソウゾウ(想像・創造)の源泉」だと語る。
日比谷の歴史を想像し、新たな創造を作り出す街。
日生劇場では、史上最年少で演出を手がけた深い縁もあり「東京、そして日本の文化にとって重要な場所」だと強い思い入れを示した。
一方、亀田誠治は日比谷を「緑の街」と評し、「野音(日比谷野外音楽堂)は大好きな会場。ステージで音を奏でると、音が東京の街中に広がっていくような至福な時間を味わえるし、日比谷公園や皇居の“緑”が与える癒し、人と人をつなぐ様子はエンタテインメントそのもの」だと声を弾ませる。
セントラルパークやブロードウェイを擁するニューヨークとの共通点についても、両名は会話の花を咲かせた。
日比谷エリアが観劇に染まる「Hibiya Festival」
2018年、東京ミッドタウン日比谷開業後、初のエリアイベントとして開催された「Hibiya Festival」。
そのプロデュースを手がける宮本は「街の中で音が出せる。その波動が広がっていくあの幸せ感は、劇場では味わえない」と屋外ならではの魅力を熱くコメント。
会場となる日比谷ステップ広場は「人々が愛おしく見せる場」だと言い、「ご覧になる皆さんの心が開放されて、参加型で楽しんでいただき、出演者も稽古場より何倍も良かった。大きな渦が生まれて、あらためて“人ってすごいな”と。街も歴史も、そして未来も一緒に分かち合える」と日比谷エリアが観劇に染まるフェスティバルに思いを馳せる。
この言葉に、亀田は「人の心が開かれていく。ここがエンタテインメントの一番大事なことだと思う。見る人、出演者、全員で作られていくんですね」とうなずいた。
親子孫三世代で楽しめる音楽を。屋外イベント「日比谷音楽祭」
一方、亀田は日比谷公園で開催する「親子孫三世代誰もが楽しめる、フリーでボーダーレスな野外音楽フェスティバル」という日比谷音楽祭の実行委員長を務めている。
参考にしたのはニューヨークのセントラルパークで開催される夏の恒例フリーイベント、サマーステージだと言い、「生活の中に音楽が根づいている光景を日本でもやってみたいと思った」。
2019年には2日間で約10万人を動員。昨年はコロナウイルスの感染拡大により中止となったが、「音楽の受け取られ方に分断が起こる中、世代もジャンルも超えて、音楽を鳴らすきっかけをどうしても作りたかった。届けたいのは親子孫三世代で楽しめる音楽。僕はライフワークとして一生続けていく」と熱い決意が語られた。
それに対し宮本も「大賛成! やっぱり生感覚を感じたいから、みんな待ってるでしょうね」と2021年の開催に期待を寄せる。
コロナ禍で考えるエンタメ「実は今、最高の時期が来ている」
新型コロナウイルスの感染拡大により、多大な影響を受けているエンタテインメント業界。それでも両名は、コロナ禍を乗り越えた“未来”に前向きな姿勢を示している。
「実は最高の時期が来ているんじゃないかと。コロナそのものは悲しいけど、“なんで歌うのか、なんで演じるのか”。そんな根源に戻されていると思う。競争よりも誰に伝えたいんだろうってことが何より大切で、観客もそれを求めている。実際、ものすごく面白い舞台がどんどん生まれていますから」(宮本)、「ミュージシャンもそうで、“自分に何ができるのか”“音楽を奏でるのはなぜなのか”という根本部分に立ち返って、自問自答している。その結果、磨きに磨き上げた作品が世に出始めている」(亀田)
思いがけない“共鳴”に、宮本は「いやー、似てる! ここで楽しまないで、いつ楽しむ!ですよね(笑)。エンタテインメントは昔に戻るのではなく、新たな一歩を踏み出した」と歓喜の声をあげた。