【re:START】エンタメ再始動キーパーソンInterview KREVA【前編】
ポストパンデミックの音楽カルチャーはどういったものになるのか。時代が大きく変わるなかで、どんな表現がこの先に生まれていくのか。
そういったテーマをいち早く模索しているアーティストのひとりがKREVAだ。2020年2月27日から予定されていた<KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」>全国ホール&アリーナツアーは新型コロナウイルス感染拡大防止のため全公演無期限延期。
そのうち2月29日に予定されていたLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での公演は無観客ライブとして実施された。
外出自粛期間となった4月以降には自宅からYouTube LIVEを実施。ファンとのトークだけでなく、みずからビデオミキサーなどの機材を導入し、ビートメイクの様子をリアルタイムで解説しながら生配信を行った。
ツアーファイナルを予定していた6月24日の午後9時08分には、有料生配信ライブ<KREVA Streaming Live「① (マルイチ)」>も開催される。
コロナ禍の3ヵ月に彼がどんなことを思っていたか。話を聞いた。
全国ツアー無期限延期、その決断の裏にあった想い
── KREVAさんは2月末から全国ツアーを予定していたわけですが、それを延期や中止にする決断についてはどういうものでしたか。
KREVA 会社的にも当然迷ってたけど、自分としてはわりと早くに“なし”にしようと決めました。その理由としては、ツアーのタイトルが「敵がいない国」というものだったのが大きかった。
ツアーでは、ある種のファンタジーとして「敵がいない国」というものを提示しようとしていて。もちろん実際にそういうものはないし、世の中には戦争だってあるけれど、それでも会場に集まった全員で音楽を楽しめば、この空間が「敵がいない国」になる。
そういうことを提示するライブを用意して、衣装も着てゲネプロもやったんだけど、いざやろうとすると俺がやりたいことがことごとくハマらない。
見えない敵が世界中にいるなんて、想像だにしなかったから。ファンタジーを強烈に超えてくる現実が目の前にあって、エンタテインメントの力や想像力でどうこうできるもんじゃない。
だから自分から「やめましょう」と言いました。申し訳ないけど、俺は今のこの状況でいいものができるとは思わない、と。
── なるほど。ビジネスとか観客の安全もさることながら、テーマやコンセプトが大きかった。
KREVA ほんとに大きかった。無理して集まって「ここだけでも音楽を楽しもう!」って全力で思えるんだったらまだしも、こっちがそこに疑問を抱いてるままじゃ何もできない感じだったから。
これがたとえば「人と人がもう少し歩み寄ればなんとかなる」というような問題だったら、逆に「敵がいない国」というファンタジーを提示することに何かの意味があったかもしれないけれど、今回のことに関しては、頭の中で考えてたストーリーとか話す内容とかも、ことごとくハマらなかった。それが大きな理由だったかな。
── 2月29日のLINE CUBE SHIBUYAの東京公演は無観客ライブになりましたが、あの決断は?
KREVA うちの社長がそれを言ってくれたのもあったけど、そのときの社長の言葉ですごく響いたものがあって。
みんな、「できることをしよう」って言ってたんだけど、社長は自分に言い聞かせるように「できないことはしない」って言ってた。それを聞いてすぐに答えを出せた感じだったかな。
無理に新しいことを提示するわけじゃないし、準備はしてたわけだからできないことじゃない。とはいえ、ただ黙ってるのも嫌だったんで。
── そしてツアーは無期限延期になりましたが、これは?
KREVA 延期にして振替公演の日程を決めても、それがまた再延期になってというのを繰り返すんじゃないかなと思ったんで。
ただ、「無期限延期」という言い回しにしたときにスタッフの中でもひとつ腑に落ちたようなところがあったんです。実質的には中止になるけれど、いつかやりたいという気持ちもある。
それを表明するには「無期限の延期」と言うのが一番いい。それで区切りがついた感じですね。ツアーの中身はきっちりと作ったので、これはいつになるかわからないけれどやりましょう、という気持ちです。
── 4月からは外出自粛期間になりましたが、KREVAさんはどう過ごしてましたか。
KREVA 自分としては、アーティストとして曲を作るいい機会だなってとらえてましたね。ほとんどのアーティストがそうだったと思うけど、長い合宿のような感じで、じっくり曲を増やす。
それに励むのと、あとはひとりでYouTube LIVEをやったりして発信しようと。そっちに切り替えました。あとは家族と過ごす時間を大事にしようと思ったりしてましたね。