【re:START】エンタメ再始動へ向けて。
ぴあではエンターテイメント業界のキーパーソンにインタビューを連載していきます。
第3回は、株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション執行役員であり、「#オンラインライブハウス_仮」発起人の柳井貢氏に、音楽ファンにとって不可欠の「場」であるライブハウスへの思い、観客とのコミュニケーションのあり方、ライブにおける「生」の概念、再生へのメッセージなどを3回にわたってお聞きします。
(※この取材は、5/14にオンラインで行いました。)
支援をしていただくだけではエンタテインメント自体が衰退していくのではないか
── 昨日、2回目となる公演を実施されました(5/13「FM802弾き語り部 リモート編♪-at #オンラインライブハウス_仮」@オンライン_心斎橋BIGCAT)。これまでの手応えとしては、いかがですか?
柳井 おおむねは思っていたとおりのことができたかな、というのが所感ですね。
要因として、出演アーティストのファンに若い人たちが多かったというのと、FM802のイベントだったということもあったとは思うのですが、みなさんそれほど抵抗なく楽しんでいただけたのかなという印象でした。
事後アンケートもお願いしていて、まだ僕自身がしっかりと見たわけではありませんが、ポジティブなものが多かったというふうに聞いています。
── ポジティブな手応えをどこで一番感じられましたか?
柳井 この仕組みの肝になっているのが、オンライン上の空間でありながらもキャパシティを設定する、というところにあるんですね。
で、そこの部分に対する疑問であったり違和感というのを解消していかなければいけないという課題があるんですが、昨日の公演では──キャパシティは80名だったんですけど──80名だからこそ可能な盛り上がり方や楽しみ方があるというのが、なんとなく伝わったんじゃないか、だからこそみなさんにポジティブな反応を示していただけたのではないか、というところですね。
── なるほど。そもそものお話を伺いたいのですが、この「#オンラインライブハウス_仮」という企画は、新型コロナウイルスによる感染症拡大の前に組み立てていたものなのか、それともコロナきっかけなのか、どちらですか?
柳井 完全にコロナきっかけですね。
ライブハウスをはじめ、コンサートの現場など、仕事がなくなって危機に陥っていると。
そこに対して何らかのアクションをしなければいけないと思っているときに、一方で、助成や給付や支援といった言葉が飛び交っている。
もちろんそれはそれで必要なことです。ですが、そういうことばかりになってしまうと、アーティストやコンサートスタッフ、ライブハウスで働く人たちといった音楽に
携わる人たちを見る世間の目線というのが、どこか「かわいそう」なものの対象になってしまうんじゃないかという気がしたんです。
そこで、あれ? こんなに心配されたり、助けられたりしなければいけないエンタテインメントって何なんだ?って思っちゃったんですよね。
本来、音楽をはじめエンタテインメントって、大げさに言えば人に希望や夢を与えるものじゃなかったかな?って。
そしてそういうポジティブなものを提供するんだという思いで誰しもがエンタテインメントに関わって仕事をしているわけで、それなのに助けるべき対象として見られている、というのが悔しくて。
だからどんな状況下でも何がしかのサービスを提供できるんだ、そしてそのサービスに対してちゃんと対価をいただいて仕事にしていくんだ、そういうスキームも並行して作っていかないと、支援をしていただくだけではエンタテインメント自体が衰退していくのではないか、と思ったんですよね。
そこが、この企画というか仕組みの発想の根幹ですね。