終わりが告げた新たな始まり。UVERworldが示した配信ライブの新たな可能性
新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延し、現在も多くのライヴハウスは営業を自粛、アーティストは予定していた公演の中止、または延期を余儀なくされている。
いつこれまでの日常が戻るかもわからない現状で、これはエンタテインメント業界全体において由々しき事態であり、様々なアーティストが試行錯誤をしている中、6月6日に結成20周年を迎えたUVERworldがPIA LIVE STREAMにて「20 & 15 ANNIVERSARY LIVE」と題してファンクラブ会員限定の配信ライブを行った。
2月下旬と3月のツアーの延期を発表した彼らにとっては約3ヵ月ぶりのライブ。おなじみのSE「UNSER」からTAKUYA∞(Vo)のステージインとともにモノクロだった画面に色が付く様は、まるで止まっていたUVERworldの時間が再び動き出したことを表すようだ。
溜まった鬱憤を爆発させるように「Don’t Think.Feel」でライブをスタートさせ、「stay on」では普段スクリーンに映している映像をステージの床に映し、それを俯瞰で撮影することで演奏するメンバーと映像を一緒に見せるという配信ライブならではの演出を見せてくれた。
不要不急という言葉が世の中を飛び交い、活動を制限されたアーティストからすれば音楽は不要不急と言われているようなものだろう。
そんな世の中に向けて彼らは「何人たりとも俺たちの音楽を止めることはできない」と高らかに宣言して「ODD FUTURE」を演奏し、さらに3月にリリースされた「AS ONE」をライブ初披露すると「生音の爆音は違ぇな!」と久しぶりに6人で音を重ねる喜びを噛みしめた。
しかし、この日は無観客ライブであり、いつも会場を埋め尽くし、特大のシンガロングを響かせるCREW(UVERworldファンの総称)はそこにいない。
それでも彼らはポジティブに「お客さんゼロでライブをすることは何度も経験してきたことだし、それでもがむしゃらにライブをやってきた何年もがあるから今がある」と語る。
そう、結成当初の誰からも求められていない無観客と、20年経った今、彼らを求めるたくさんのCREWが画面の向こうにいるこの日の無観客ではわけが違うのだ。そしてTAKUYA∞はこう続けた。
「――今日もしっかり証明するよ。俺たちの音楽は不要不急なんかじゃねぇ!」
「あなたが想像していたライブ配信以上の最高のライブを楽しもう」
そこからお決まりの「どこのどいつが俺たちの未来に絶望を感じてたって、俺たち自身が俺たちの未来に絶望を感じることはねぇ」という「在るべき形」につながるこの言葉は、まさしくこのコロナ禍で暗中模索しながらも前向きに希望を捨てない彼らの姿勢と、自分たちの意志以外で諦めさせられてたまるかという気持ちにも重なり、胸が熱くなった。
「あなたが想像していたライブ配信以上の最高のライブを楽しもうよ」と画面の向こうに投げかけると、ライブは中盤戦へ。
事実、筆者も普段のライブを撮影して配信するものを想像していたのだが、前述したステージの床を使った演出や、「Making it Drive」など随所に見られた生の演奏シーンに映像や歌詞を合成するといった配信ライブならではの魅せ方を意識していることを強く感じたし、そのクオリティはまさしく想像していた以上のものであった。
さらには全員に対して平等に聴いてもらえるという意味でセットリストに“必殺の大切な曲”や“隠れた名曲”を組み込みやすいと「LIFE」と「美影意志」を披露してくれたのも配信ライブの利点だろう。
こうしてUVERworldは生のライブでは味わえない配信ライブの可能性を提示してくれているのだ。
そして本邦初公開の新曲として楽器陣によるジャムバトルのようなインストナンバー「Spredown」を披露するニクい演出も交えつつ、ライブは終盤戦。
本来ならばCREWとの掛け合いがすさまじい熱量を生む「Touch off」やCREWと一緒に作り上げたと語った「AFTER LIFE」では、そこにCREWの声はないものの「リハだろうと、無観客だろうと、歌ってたらCREWの声が聞こえんだよ!」とTAKUYA∞が言う通り、たしかにこれまでのライブの積み重ねで鼓膜にこびりついているCREWの声がたしかに聞こえてくる。
だからこそこの日彼らは、画面の向こうに向かって何度も「声を聞かせてくれ」と叫んでいたのがなおさら印象的だった。