「よくわかんなかったから、良いも悪いも言えない」っていうのが最悪

 

2012年『Legend Tokyo』のステージより
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――作品作りでいつも気をつけているのは、ステージが終わった時にお客さんが拍手しやすい、観てる人が盛り上がりやすい曲を選ぶようにすること。そう今人さんが語るように、梅棒のステージはとても繊細かつシビアなコントロールのもとに構築されている。ダンスだけでなく、ストーリー、演技、笑いと、多くの要素が絡み合う情報量の多いパフォーマンスは、演者の高いスキルを必要とする。だからこそ揺るぎないオリジナリティを獲得しているのだろう。
 


今人「昔、僕らと同じようにJ-POPを使ってジャズダンスを演劇的にやってたチームがいたんですけど、コンテストでボッコボコに叩き潰してやって。そのチームのリーダーだった奴がいま梅棒にいるんですけど(笑)。だから、誰にも真似できないスタイルだとは思ってます。

自分たちはどうすればいろんな人に伝わるのか、より多くの人が感動するにはどうすればいいのか、っていうのをメンバーの意見をすりあわせて決めていくので、スキがない分、あまりトガってなかったりもするんですよ。話の流れだけを見ると、実はけっこう無難だったりする。すごくシンプルで先の展開も予想しやすいし、裏切るときもわかりやすく裏切りるし」

TAKUYA「話の筋だけ抜き出したら、全然面白くないですからね(笑)。そこをダンスと手法と今人の演出で面白くしていって、受け入れてもらえているんだと思います」

今人「僕らは危うい橋を渡っているんです。一歩間違えるといつでもコケてしまう可能性がある。<話が成立する/面白い/盛り上がる>っていう橋って、細いんですよ。そこを一生懸命見つけて渡っている気がしますね」

ツル「その橋を渡れるかどうかは、本番その日を迎えるまでわかりません。ただ、まずは話がわかるかどうかが大事。面白くてもつまんなくても、いちばん最悪なのが『よくわからなかった』っていう感想です。話がつまんなかったらそれはそれでいいんですけど、まずは話がわかるかどうか。あとはダンスを揃えて迫力のあるものにしていくだけですね。これが面白いかどうかっていうのは、本番出るまでわかんないです」

今人「わかってもらえないと評価ももらえないからね。『よくわかんなかったから、良いも悪いも言えない』っていうのは最悪です」
 

――自分が梅棒のステージをはじめて見たとき、ダンスについてはほぼ無知識の状態だった。つまり“ダンスの見かた”をまったく知らない状態だったのだ。しかし、梅棒のステージには予備知識や事前情報は一切必要ない。ある意味超ベタなストーリーをハイレベルなダンスで表現することで、誰もが自然と感動を共有することができる。そんなパフォーマンスは「まず見る人にわかってもらうことが第一」という、表現の基本であり絶対条件を突き詰めてこそ、生まれうるものなのだ。