最近なにを見ても聴いてもつまらない、まわりに面白いことがなんにもない……そんな不感症気味なあなたにいますぐ出会ってほしいエンタテインメントがある。ハイスキルなダンスと演劇的ストーリー、そこにB'zやMr.Childrenといった誰もが知るJ-POPを組み合わせ、未体験のエンタテインメントを届けるダンスパフォーマンス集団、“梅棒”(うめぼう)だ。

「なんじゃこりゃ! なんだかわかんないけど、すげー!」――自分が初めて梅棒のステージを見たとき、まず最初にそう思った。『面白い』とか『感動した』というような“感想”に消化される前の、言葉にできない衝撃だけが身体に残っている感覚。とにかく、自分がこれまで見たことのない種類のエンタテインメントが、彼らのステージにはあった。まずは8月3日、渋谷公会堂で行われた日本最大のダンス・エンターテインメント作品コンテスト『Legend Tokyo』で、見事優勝を勝ち取ったステージの模様を見てほしい。
 


“J-POPのヒット曲に乗せて繰り広げられる、笑いあり感動ありのストーリー仕立てのダンスパフォーマンス”。簡潔に説明するとこうなるのだが、この説明から生まれる想像の何百倍ものインパクトを放つのが、梅棒のステージだ。めまぐるしく進行するストーリー、舞台の隅から隅まで目が離せないダンス、思わず吹き出してしまうコント的演出、そしてラストに訪れる圧倒的な感動。ダンスの枠を越えた梅棒の世界観は、見る者に大きなインパクトを与える。彼らが現在のステージを確立するまでには、さまざまな紆余曲折があった。梅棒の演出と振付を担当する今人(いまじん)さんは、結成当時をこう振り返る。
 

写真左からTAKUYA、ツル、たっちゃん、今人、KAZUYA

今人「梅棒は2001年、僕が大学1年生のときにはじめました。当時『関東大学学生ダンス連盟Σ』っていう全国の30~40大学くらいのダンスサークルが加盟しているダンス連盟が主催して、川崎のクラブチッタを貸しきっていろんな大学のダンサーが集まってダンスを披露しあうイベントがあって、それに出るために僕と同学年のダンス初心者の奴らに声をかけて結成したんです。でも当時はコミカルな音を流してコミカルな動きをするというだけで、ストーリーもありませんでした。

その後2004年の大学卒業の年に、学生イベント出演に向けてまたいつのもスタイルで作品を作ろうと思っていたんですけど、ある夜その作品をやって客席がシーーン……ってなる夢を見たんですよ(笑)。で、次の練習のときに『みんな、今回ちょっと曲を変えたいんだ。この曲でシーンとしちゃう夢を見たから』ってメンバーに話して、予定していた曲を変更することにしたんです」
 

――そこで生まれたのが、作品にストーリー性をもたせるという新たな試みだった。今人さんは当時、日本大学芸術学部の演劇学科に在籍し、演技を学んでいる真っただ中。さらに当時所属していた学内の大規模なジャズダンスサークル『BAKUの会』も、ダンスサークルでありながら演劇要素を積極的に取り入れる作風だったため、ダンスにストーリーを取り入れることに対する違和感は最初からなかったという。さらに“楽曲としてJ-POPを使う”というポイントも、梅棒の大きな個性となっていった。