キャラクターの声をあてる「声優」だけでなく、絵を描く人、スケジュールを管理する人、プロモーションを担当する人など、アニメを作る現場にはたくさんのクリエイターが参加しているわけですが、今回はアニメで描かれる物語を形作る「脚本」、制作の指揮者となる「監督」に注目して、ユニークな経歴を持つ人々をご紹介したいと思います。

そのユニークな経歴とは…お笑い。漫才コンビとして活動していた芸人、バラエティ番組の構成作家など、お笑いの世界からアニメの世界へと転向して、成功を収めたクリエイターたち……そんな「バラエティ系アニメ」とでも称すべきアニメ作品に注目してみましょう。

あの大ヒットアニメの脚本家は、元お笑い芸人!? 『TIGER & BUNNY』

「元お笑い芸人」という個性的な出自を持つ脚本家さんがシリーズ構成を手掛け、大ヒットとなったアニメとして、先ずは、この作品を挙げないわけにはいきません。そう、『TIGER & BUNNY(タイバニ)』です!

本作は、「それぞれに特殊な超能力を持つ正義のヒーローの活躍がテレビ中継されており、各ヒーローは平和を守る使命と同時にテレビタレント的な側面も有している」というユニークな世界観が特徴のヒーローアクションドラマです。

主役となるのは、加齢による衰えの為に、ヒーロー家業もプライベートも落ち目になっているヒーロー「ワイルドタイガー」こと鏑木・T・虎徹と、そんな彼の前に颯爽と現れた若きニューヒーロー「バーナビー・ブルックスJr.」という性格も年齢も正反対の二人。そんな二人のヒーローが織りなす「バディ・ムービー」的なストーリーは、幅広い層から熱狂的な支持を受けました。

テレビ版の放送終了後も劇場映画の公開やBD-BOXのリリースなど、様々なメディアミックスや商品展開を経て、今もその人気は継続中であり、長く愛され続けるアニメ作品となっています。

そんな『TIGER & BUNNY』を世に送り出した脚本家が、西田征史さんです。西田さんは、元々「ピテカンバブー」というお笑いコンビで活動をされており、解散後に脚本家、構成作家に転向されたというバックボーンの持ち主です。

そうした情報を踏まえて『TIGER & BUNNY』を観てみると、劇中のテレビ局の描き方や、「正義の味方であると同時に、スポンサーや視聴者の存在も気にかけなければいけない」という特殊なヒーロー像の描写にも、テレビ業界や芸能界での活動を経た経験者だからこそ描ける絶妙な説得力が感じられます。

ちなみに、映画やテレビドラマを中心に活躍されていた西田さんにとって、『TIGER & BUNNY』は、アニメの脚本に挑戦した初の作品でもあります。初挑戦で、これだけの大ヒット作を作り出してしまうとは……西田さんの才能には脱帽ですよね。

その後も数多くのドラマ、映画でシナリオライターとして活躍し、自身が執筆した同名小説を映画化した『小野寺の弟・小野寺の姉』では、監督を務めるなど精力的に活動をされている西田さん。是非ともその脚本家としての辣腕を再びアニメの世界でも振るって欲しいところです。