「エンディングノート」に書き記しておきたいことは、預金や、介護といったことではなく、実は感謝へのメッセージという項目が圧倒的に多かった。
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「記憶も残しやすい、若いうちから”終活”を」と、澁谷さん
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澁谷さんは言う。「「エンディングノート」は遺産がないと書く必要がない」という意見もありましたが、違うと思います。僕は”Myメッセージ”の欄などを見て泣くんじゃなくて、”ああ、そうだったの?”と故人を振り返る機会になってほしい。データ調査をしていた時に”親を亡くすと、親と共有していた大切な思い出が自分だけのものとなってしまい、自分の記憶がなくなれば消えてしまう怖さを感じる”という方もいらっしゃいましたが、「エンディングノート」に自分が大事にしている思い出をちゃんと書き残しておけば、誰かと思い出が共有できて、気持ちが変わると思うんです」

そして、自分史を書き残す上では、記憶もしっかりと残しやすい”若いうち”からがお勧めだという。

「このノートの中身は、1~2日で書けるものではありません。残された人生を歩む上で、人生を振り返り、自己を見つめ直す意味でも、記憶が新しい20代、30代から、書いてもらうのがいい。例えば、子供ができたとして、子供への思いはライブで書いていったほうが明確で、リアルな思い出が残ります。思い出す上で、いま30年前を思い出すのはしんどいけど、15年前だと、もう少し細かいことを思い出せて、詳細なことを人に伝えることができます。年をとってから始めると、労力になりがちなので、自分の人生を振り返る、分岐点となるツールとして、なるべく早くからこれを書くことを勧めたい」

澁谷さん自身、実際に自分も『マイウェイストーリー』を綴っていて、楽しかったのは、「思い出すことだった」と言う。”友達、こんなやついたよね”とか。日々の生活に追われると、思い出す行為はおざなりになりがちだが、「エンディングノート」を介して友達づたいに懐かしい思い出を聞いてみようかな? という気持ちになったのだとか。同窓会などで昔の友人と会う機会もできたりしたという。しっかりと自分の記憶を残したいという思いが、人と人との絆の再確認という役目を果たしたようだ。

「このノートはもし、自分が死んだときに、なんにも家族や身近な人に負担もかからない。これは残すべき愛情だと思う。残す人の意志がのこっていれば、まわりにも相談しやすくなる。会社関係の人にも親戚の人にも説明できて、残された家族にとってもハートフルな話」