■報酬100億か?人類滅亡か?『暗殺教室』の超トンデモ設定

『暗殺教室 1(ジャンプコミックス)』
松井 優征(著)
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『暗殺教室』のストーリーは、空に浮かぶ月が何者かによって7割がた消し飛ばされた事件からスタートする。

その犯人を名乗る生物はあっさり姿を現し、なぜか「椚ヶ丘中学校3年E組の担任になる」ことを望んだ。月を簡単に砕き、来年3月には地球も破壊すると宣言したこのバケモノに政府はノーと言えなかった。幸い、その生物は政府との契約により、生徒にだけは危害を加えない。そのためE組の生徒30人は100億円という莫大な成功報酬と引き換えに“暗殺者”へと仕立て上げられた。

標的は無数の触手を自在に操り、超パワーに超回復力を兼ね備え、マッハ20で移動できる常識外のクリーチャー。絶対に殺せそうもない史上最強の先生、愛称“殺(ころ)せんせー”を相手に、人類存亡を賭けた一年間の学園生活がはじまる……。

いきなり冒頭から超展開の連続である。ただしルールはとても分かりやすく、落ちこぼれクラスの生徒30人 vs 超生物の殺せんせー1人(1体?)によるバトルという単純な構図。中学3年生がいきなり殺しの現場に投げ込まれるといえば、過去に大ヒットした小説『バトル・ロワイアル』を思い出させるが、この『暗殺教室』にそっち系の絶望感・悲壮感はまったくない。なにせ標的となる殺せんせーは、E組の生徒に危害を加えないのだから。勝手に自爆テロでもやらない限り、生徒が死傷する心配は限りなく低いのだ。

しかも殺せんせー、自分を暗殺しろなんて物騒な課題を出したわりに、とても良い教師だ。言葉遣いは丁寧で、勉強の教え方もわかりやすい。全力で殺しに来た攻撃を防ぎながら、その生徒の悩みまで解決してあげる万全のサービスっぷり。不覚にも読んでいて「このせんせーのクラスで勉強したいなぁ」と思ってしまうほど。松井氏が描く作品は『脳噛ネウロ』の時もそうだったが、どんなに殺伐として見えても必ず“癒し”と“救い”を用意している。殺せんせーに返り討ちをくらいながら、次第に生き生きと笑顔を取り戻していく生徒たち。落ちこぼれクラスと一括りにされていた彼らが個性豊かに成長する姿は、読んでいて心にぐっと響くものがある。

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