店内には懐かしい(?)フライヤーのコピーも貼られています

――たしかに「猫も杓子も○○系」みたいな状況ではないかもしれないですね。ゴールデンボンバーが流行ってるからといって、インディーズシーンに「ゴールデンボンバーみたいなバンド」が増えてるわけじゃないですしね。

だぃた:ゴールデンボンバーは凄いですよね。「バンドじゃない」とか「ヴィジュアル系じゃない」という人もいると思うけど、この社会的な認知度は凄まじいですよ。紅白に出るということは、ヴィジュアル系というと語弊があるかもしれないけど、バンギャルちゃんが好きそうなバンドで紅白に出てるのって、XとLUNA SEA(河村隆一)、L'Arc~en~Ciel、GLAY、Gacktくらいですよね。あとは聖飢魔IIとか。そこに連なるということですよ。

普通の中高生やサラリーマンだって知ってるし、地上波のTV番組にもバンバン出てる。お茶の間からヴィジュアル系の入り口みたいなバンドになってほしいというか、ゴールデンボンバーに興味を持ってヴィジュアル系雑誌を買ってみたら「あ、この人たちもかっこいい!」みたいに、新規のファンがヴィジュアル系シーンを好きになってくれると良いんじゃないのかなあって。

――ジャンルのファン人口が増えない限りは、なんともいえないですからね。とくにいまCDも売れないと言われてますし。

だぃた:昔はマイナーなバンドでも3000枚や5000枚CDを売っていましたからね。今はたしかにCDは売れてないけど、「ライブハウスに行く楽しさ」みたいなものは無くならないと思うんです。それこそTVで見て、youtubeで見て満足とかじゃなくって、ライブハウスの音だったり熱だったり人の多さだったり、怪しさだったり。行ってみないと分からない楽しさ、そういうのを体験してほしいなと思います。

中高生とかだと学校の友達と遊ぶのも楽しいだろうけど、周りに知らない人ばっかりで「ちょっと悪いことしてる気分」みたいな。実際は悪いことしてるんじゃないだけど、ちょっと背伸びしてる気分。そういう楽しさって絶対あるはずだから。若い子がもっと増えればいいなって。

ところで、逆に質問なんですけど、「ヴィジュアル系」の最初の世代ってどのあたりのバンドだと思います?

――えっ、DEADEND……ですかね? あと「ヴィジュアル系」という言葉の由来になったようなX(japan)のキャッチコピー「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」とか?

だぃた:お客さんにも同じ質問をするんですけど、みなさん大体ウィキペディアに挙がってるバンドを言うじゃないですか。でも「ヴィジュアル系」という言葉自体は最初は女性誌だか週刊誌だかが揶揄する意味でつけた言葉だったと思うんです。もっと前は「お化粧系」「お耽美系」「黒服系」とか。

90年代なかばくらいに後付で「ヴィジュアル系」って言葉が使われるようになってその後に「ヴィジュアル系四天王」が出てきたり。「あのバンドはヴィジュアル系と呼ばれるのは嫌う」とか色々言われたりしたけど。あの世代の人は「ヴィジュアル系」をやろうと思ってやったわけじゃなく、ポジパンやハードロックやメタルを聞いてバンドをやろうと思った世代だから、後付で「おまえらヴィジュアル系」って一括りに呼ばれるようになったら、自分たちがヴィジュアル系と呼ばれることに違和感を持つのは普通のことじゃないかなーって。

そうやって考えると、「ヴィジュアル系をやろう!」と思ってバンドを始めたのって、the GazettEやナイトメア、シド、Alice Nineみたいな「ネオ・ヴィジュアル系」と呼ばれる世代からですよね。

――たしかにこのあたりのバンドのメンバーのインタビューを読んでも「LUNA SEAを聴いてバンドを始めた」みたいな方が多いですよね。

だぃた:2000年以降のバンドが「ヴィジュアル系」第一世代、それ以前はレジェンド世代っていうの考えも面白いんじゃないかなぁと。そう考えると「ヴィジュアル系」ってまだ始まったばっかりなんだし、これからも面白いバンドがたくさん生まれてくるんじゃないかなあって。


【店舗情報】
高円寺の吹き溜まり、お洒落じゃないアングラお耽美バー grand-guignol
ヴィジュアル系好きな中年男性(心はバンギャル)が細々で営業中
営業時間20時~29時(水曜定休) charge+drink=1000yen 以降1drink500yen
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