Photo credit: Alex E. Proimos / Foter / CC BY
  

「上司の考え方に共感できない!」「若手の思考回路は理解不能!」――こんな対立はどんな会社にもあるはず。それでも、場合によっては家族よりも長く過ごす深い関係なのだから、コミュニケーションを充実させ、どうにかして分かり合いたいものだ。そのためには、どんなことを意識すればいいのだろう?

 

今回は、そんな疑問を「ワンピース世代」「ガンダム世代」というくくりで紐解いてみたい。ガンダム世代とは、アニメ『機動戦士ガンダム』を少年期に観て1980年代に社会へ出た世代(57~67年生まれ/現在45~55歳)のこと。一方のワンピース世代は、80年代に生まれて、マンガ『ONE PIECE』とともに育った世代(現在23歳~33歳)だ。
名付け親は『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(朝日新聞出版)の著者である鈴木貴博さん。自身も“ガンダム世代”の鈴木さんに、両者の特徴とコミュニケーションのポイントを聞いた。

 

仲間を重んじる「ヨコ社会」のワンピース世代

 

『ONE PIECE FILM Z ワンピース フィルム ゼット』公開中 (C)尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会
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『ONE PIECE』の主人公であるルフィは、海賊王=世界で一番自由な男を目指し、仲間との絆を大切にしながら冒険を繰り広げている。仲間を信じ、力を合わせて戦うルフィたちの姿に影響を受けて育ったのが「ワンピース世代」だ。大量リストラや大企業の倒産など景気の悪いニュースに触れながら育った、この世代の特徴とは?


「“終身雇用”という神話もすでに崩れ、現在は国や会社などの組織が個人を守ってくれない時代になってきています。ワンピース世代は、そのことにいちばん早く気づいた世代。そのため『自分は自分で生きていかなければいけない』という意識を強く持ち、“個人”が主語となる考え方を持っています」

とは言え、自分ひとりで成し遂げられることは限られている。そのため、ワンピース世代は

「自分と、ごく一部の仲間たち」という繋がりの中で、対等なつながりを重んじるヨコ社会を築き、生き抜く知恵を見つけてきたと言えそうだ。それゆえに、会社という組織の中では、自分本位な言動が目立つという面もある。

組織に従う「タテ社会」のガンダム世代

 一方の『機動戦士ガンダム』で描かれるのは、期せずして戦争に巻き込まれる少年たちの姿だ。主人公のアムロは地球連邦軍という組織の中で、いたるところに見られる矛盾と葛藤しながら戦っていく。少年期にガンダムを楽しんだ世代は、どんな社会で成長したのだろうか。

「ひと世代上の団塊の世代は“社会の歯車”として組織の中で役割を果たすことで、日本を大きく成長させてきました。ガンダム世代も幼少期から“自分は組織の中で果たさなければいけない役割があり、それを全うするのが正しいことだ”と教えられる。個人レベルで反発心を覚えることがあっても、時代はそれを許しませんでした」

組織に尽くしてきた団塊の世代のもとで、疑問を感じながらも会社に滅私奉公することを余儀なくされたガンダム世代。多少の理不尽があっても、「自分と仕事上の役割は違う」と割り切って耐え抜き、組織の序列に従う傾向が見られるそうだ。融通が効かない面もあるが、不満があっても投げ出さない粘り強さがこの世代の長所だと言える。