『機動戦士ガンダム00』などを手がけた水島精二氏が総監督を務め、新人フラガール5人の成長物語が紡がれるオリジナル長編アニメーション映画『フラ・フラダンス』。
ハワイ出身でフラガールに憧れを抱いて来日したオハナ・カアイフエ役の前田佳織里さんと、ダンスの実力はあるものの笑顔が大の苦手という白沢しおん役の陶山恵実里さんにインタビューを実施。
等身大の女の子たちを演じる若手女性声優2人に役柄を演じる上でのこだわりポイントや、人によってさまざまな見え方がある作品の魅力についてお聞きしました。
フラダンスに打ち込む等身大な女の子たちを演じる上で、こだわったポイント
--アフレコ時のお話からお聞かせください。情勢的に大人数での収録ではなく少人数での収録だったと思うのですが、お2人はご一緒に演じられたのでしょうか?
前田:私は陶山さんと(鎌倉環奈役の)美山(加恋)さんと3人で収録させていただくことが多くて、現場で掛け合いが出来ない方はヘッドホンで音声を聴きながらでした。
陶山:そうですね。
前田:この3人の個性がみんな良い意味でバラバラだったので(笑)。しおんちゃんの最初のスピーチのシーンのセリフを聞いたときは衝撃的ですごく好きでした。めっちゃきょどってるー! って。
陶山:えー!(笑)。
前田:その演技を生で見れてすごく嬉しかったです。
陶山:私もオーディションの段階でオハナちゃんたちのセリフを読んだ時に、どんなお芝居になるんだろうってずっと気になっていたんです。前田さんのオハナちゃんのセリフを聞いた瞬間に「これがオハナちゃんだ!」って思えてすごく可愛くて。面白くて素晴らしかったです。
前田:はぁー! 嬉しいです、ありがとうございます。
--本記事用の写真撮影の時も、すごく和気あいあいとされていたのが印象的でした(笑)。
前田:身長差がお姉ちゃんと妹みたいになっていて、ほんとに不思議な感じでしたね(笑)。本当にしおんちゃんにそっくりだよね。
陶山:本当ですか! ちょっと挙動不審だからかもしれない(笑)。
前田:そんなことないですよ! あと、アフレコも回を重ねていくことに掛け合いもスムーズになっていった感じがあって。
--(夏凪)日羽ちゃんの恋バナを、みんなでノリノリでしているときの掛け合いが良かったです。
前田:あのシーン可愛いよね!
陶山:大好きです!
舞台は福島県いわき市に実在する「スパリゾートハワイアンズ」
--本作は福島県いわき市に実在する「スパリゾートハワイアンズ」が舞台ということもあり、リアリティある部分とアニメならではの表現のバランスが絶妙な作品だと感じました。
陶山:演出としてはコミカルなシーンがたくさんあったりファンタジックなシーンもあるんですけれど、自分はしおんが成長していくことを繊細に演じられたら良いなって意識でした。
なので、結構リアルに演じていましたね。
--具体的に演じる上で気をつけたポイントはどんなところでしょうか?
陶山:しおんちゃんは本当に自分にすごく近くて、共感しかなかったんです。人前でそわそわしちゃう感じや人見知りしてしまう感じを最大限盛り込んで出そうと思いつつも、自分とは違ったリアクションを(しおんが)するんです。
枠組みとしては似ているんですけどその中で違う焦り方があるからこそ、自分はこうなるけれどしおんちゃんはこういう焦り方をする、というように自分になりすぎないように意識しました。
理解出来るからこそ寄り添いすぎないようにしていました。難しかったんですけれど、そこをこだわって演じましたね。
--自分も人見知りなところがあるので、すごく共感できます。
陶山:違うんですよね、本当に。いろんな人見知りさんがいらっしゃる。
前田:なるほど!
--前田さんはオハナというキャラクターを演じるにあたって、こだわったところはどんなところでしょうか?
前田:オハナちゃんはなかなかにパンチがあるキャラクターだなと思っていて、どう自然に演じようかなと思っていていました。
外国人の女の子を演じるのが初めてだったこともあって、外国の言葉と日本語の中間になるような発音のニュアンスも大切にしましたし、等身大の女の子にしたかった気持ちもあって「にゃー」という語尾も可愛いんですけれど、あんまり可愛くなりすぎないようにちょっと留めたというか。
可愛さの中にリアルさがあれば良いなと思って演じさせていただきました。
--ぱっと見はアニメ的なキャラクターなんですけれど、見ていくとすごく等身大な女の子だったんだと思えました。
前田:最初は天真爛漫で周りを明るくするすげー面白いやつが来た! って印象だと思うんですが、後半はちょっとホームシックになってほろりと涙を流すシーンがあったり。
オハナちゃんの人間としての多面的なところを見せたいなと思っていましたし、いろいろな引き出しに挑戦させていただいたことがこだわりポイントだったと思います。
前を向いていこうというプロセスが丁寧に描かれている作品
--水島総監督やスタッフからのディレクションで印象的だったことはありますか?
前田:オーディションに参加させていただいた時からスタッフさんの「まずは楽しんでください」という雰囲気を肌で感じていて、実際に収録する時も最初に「この子たちが明るく前向きにやっている楽しさを伝えていきたい」というコンセプトをお聞かせいただきました。あと、オハナちゃんは思いっきりやってくださいというディレクションもあって。
陶山:私は逆に現場でディレクションいただいたことは、もっと声を小さくということだったんです。本来声のお芝居をする時は声をしっかりと出すものなんですけれど、(音響監督の)木村さんも「今回は出さなくていい」とおっしゃっていて。
あと水島総監督は私の人見知りの部分も知ってくださっているので、「あなたに近いからありのままでいい」というお話をされました。
--本作はオリジナル作品ということで、改めて最初にシナリオを読まれた時の印象をお聞かせいただけますか?
前田:オーディションの時に資料としてシナリオをいただいて、ただ明るいだけじゃなくてみんな挫折を経験したり悩んだりしながら前を向いていこうというプロセスが丁寧に描かれている作品だと思いました。
その中で日羽の成長が大切にメインで描かれているんですが、みんなの初ステージで慌ててしまって失敗しまくってしまったところにすごく共感しちゃいました。面白かったよね?
陶山:面白かったですね。ハンガーが飛んでいって変なあだ名が付いちゃって(笑)。
前田:1人ずつドン! って画面に出てきて(笑)。そういうところがいいなって思いましたし、やっぱりみんなの友情が良いですよね。
陶山:仲良くなっていく経過もリアルで、ちょうど1年の距離感で描かれているなって思いました。
前田:わかるわかる。映画の中では1年経っているけれど、我々は短いスパンでの収録だったので、その過程で成長を見せていくのもけっこう難しくて。
陶山:そうですね。
--丁寧に描かれている分、積み重ねの演じ分けが難しそうですね。
前田:そうなんです。オーディションの時から難しいなと思っていて、勉強させていただいたなって思っています。