浦安市への寄付は「ディズニーマジック」の一つ

──オリエンタルランド社から浦安市に対して、寄付が行われています。どういった経緯で、このような寄付が行われるようになったのでしょうか。

浦安市とアメリカ・フロリダ州にあるオーランド市とは、姉妹都市提携を結んでいます。

提携20周年のときに、浦安市とオーランド市で相互訪問を行ったのですが、そのとき現地では「ディズニーマジック」と呼ばれる、地元への貢献活動があることを知りました。

オーランド市といえば、世界最大のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートがあることで有名です。

ディズニー社からオーランド市に対して、地域貢献として寄付が行われていたんですね。

ぜひ浦安市でもやってほしいと考えて、オリエンタルランド社に打診しました。

 

それで実現したものの一つが、青少年交流活動センター「うら・らめ~る」です。

この施設は、浦安市のスポーツ団体や青少年団体の子どもたちが、合宿先として使えるホテル機能をもっています。

ここはもともと市が所有する土地だったのですが、建物はオリエンタルランド社からの寄付によって建設されました。

浦安市青少年交流活動センター 「うら・らめ~る」

寄付とは少し違いますが、東京ディズニーリゾート周辺にある道路は、浦安市ではなくオリエンタルランド社の私有地であり、維持管理もしています。

本来は浦安市に移管されて、市が維持管理をすることになっているのですが…。

管理費用が高額になってしまうために、今でもオリエンタルランド社が直接管理しています。

ガードレールが青色、オリエンタルブルーと呼ばれる色だそうですが、白色ではなく青色になっている道路は、すべてオリエンタルランド社の私道なんですよ。

浦安市運動公園前の道路標識。デザインが統一されているのは、オリエンタルランド社が維持管理をしているから。 © Disney

震災復興にも、オリエンタルランド社の力が…

──2011年に東日本大震災がありました。市長在任時のエピソードについて教えてください。

もともと浦安市は、大部分の土地が埋め立て工事で造成されています。

大きな地震が起きたときに、液状化が起きることは分かっていました。

1995年に阪神大震災が起きたときも、当時は県議会の議員でしたが、液状化がどうなっているのかを神戸に見に行ったほどです。

埋め立て地は「圧密沈下」といって、時間がたつと土の中の水分が抜けていき、どんどん沈んでいきます。

浦安市内を調べてみると、氷河期の澪(みお)と呼ばれる窪地が地下にあり、どうしても沈下しやすい場所が多いことが分かりました。

 

東京ディズニーランドの建設工事では、当時で100億円近いお金をかけて、液状化対策工事をしたそうです。

しかし、あまりにも莫大な費用がかかるために、駐車場まで工事ができなかった。

だから東日本大震災のときに、テーマパークの施設は無傷だったのに、駐車場だけが液状化してしまって、メディアで大きく取り上げられてしまったんです。

震災で東京ディズニーランドは休園していましたが、オリエンタルランド社は浦安市の復興のために力を貸してくれました。

社員や準社員(アルバイト)を一人も解雇せずに、市内のボランティアに人手を回してくれたのです。

「オリエンタルランド」と書かれたビブスを身に着けていた方たちの姿は、今でもよく覚えています。

 

当時一番印象的だったのが、市内の下水道の復旧についてでした。

ある班組織が機能していない自治会の住民集会に行ったときに、応急復旧の状況が伝わっていないために不安感を募らせていた住民から「いつになったら下水道が使えるようになるんだ!」と問い詰められたんです。

まだ震災から2週間ぐらいしかたっていない頃です。

あの時点では、いつ復旧できるのか皆目見当もつかない状況でした。

しかし、ここで「分かりません」とは答えられない。

そこで、担当の環境部長に「今大事なのは、不安を募らせる住民を安心させること。そのために、希望をもたせて頑張ってもらおう」と耳打ちして「4月15日までに応急復旧を終わらせます」と宣言させました。

住民を安心させるためだったのですが、これがメディアで大きく取り上げられてしまって…。

担当部長は「もし4月15日までに終わらなかったら、自分の首が飛ぶ」と顔が真っ青になってしまいました。

しかし、「部長の首を飛ばすな」と、応急復旧部隊がはりきって、突貫工事に突入したのを覚えています。

 

この「4月15日」に根拠は全くありませんでした。

2週間ぐらいあればなんとかなるだろう。

そんな楽観的な思いもありました。

しかし、これに喜んでくれたのは、オリエンタルランド社だったんです。

私は当時全然知らなかったのですが、4月15日は東京ディズニーランドの開園記念日だったんですよね。

オリエンタルランド社の関係者は「浦安市がこの日までに応急復旧が完了すれば、テーマパークの営業を再開できる」と喜んでくれたそうなんです。

 

最終的には4月15日までに、市内の97~98%の下水道を応急復旧させることができました。

実は石原慎太郎都知事(当時)や、東京都の下水道局の方がたくさん支援してくださったおかげでした。

東京ディズニーランドもこの日から営業を再開してくれましたね。

東京ディズニーシーの開園から20年!

松崎秀樹さん

松崎さんからは、浦安市とオリエンタルランド社との関係について、様々なお話を伺うことができました。

東京ディズニーシーの開園から20年。

これからも浦安市と東京ディズニーリゾートの深い結びつきは続いていきそうです。

東京ディズニーリゾートや海外のディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報を皆さんへお伝えします。はてなブログ『舞浜新聞』(maihama.hateblo.jp/)では、様々な切り口で記事を書いています。よろしくお願いします。

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