2020年5月22日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、みずほ銀行などとの間で2,000億円規模の融資枠を設定した、とメディアで報じられました。
この報道に対して、SNSでは「ディズニーも経営が厳しいの?」「潰れちゃうんじゃないか」といった心配の声が上がっています。
実はこの2,000億円、いわば「転ばぬ先の杖」なので、オリエンタルランドの経営にはまったく問題はありません。
今回はパークの臨時休園が続くオリエンタルランドが、経営的に万全だと言える3つの理由をご紹介します。
理由1 手元にある金融資産は「2,600億円」
オリエンタルランドは「無借金経営」
新型コロナウイルスの流行によって、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、2月29日から臨時休園となっています。
また4月1日からは、4つのディズニーホテルも、宿泊・婚礼・レストランすべてで休業しています。
パークもホテルも休業すれば、オリエンタルランドにほとんど収入は入ってきません。
経営的に問題はないのでしょうか。
オリエンタルランドの財務書類を見ていくと、2020年3月末の「現金および預金残高」は、2,611億円となっています。
銀行からの借り入れではなく、純粋な手元資金だけでも、これだけ抱えているのです。
オリエンタルランド全体の売上高は、2019年度で4,645億円。
1か月あたり387億円の計算ですから、半年分の売り上げに匹敵する金額です。
有利子負債(870億円)の額も上回っているため、実質的には「無借金経営」と言っていいでしょう。
心配なのは、休園中も発生する「固定費」
ただ気になるのは、人件費などの固定費の負担です。
パークやホテルは休業中ですが、オリエンタルランドはアルバイト(準社員)に対して、休業補償を支払っています。
日本経済新聞の報道によると、法的には賃金の60%のところを、20%上乗せして支給される予定です。
2019年4月1日現在で、東京ディズニーリゾート全体の準社員は、過去最多の「19,697名」。
いくら働き手をつなぎとめるとはいえ、経営にとっては大きな負担になるはずです。
オリエンタルランドでは、すでに約5,400人の社員を対象に、賃金の一部を支払う「一時帰休」を実施しています。
休園の長期化を見越して、できるだけ人件費を抑えておきたいのでしょう。
もちろん、人件費だけではなく、アトラクションなどの保守点検費用や、減価償却費も重くのしかかってきます。
固定費を計算するうえで参考になるのが、2011年の東日本大震災のときのデータです。
2010年度の決算では、3月中の臨時休園(20日間)で、53億円の固定費が「災害による特別損失」として計上されました。
パークやホテルが臨時休業していても、1日あたり2億6,000万円ほどが、固定費として発生していた計算になります。
9年前と比べて、人件費や原材料費も上昇しているため、今は1日あたり3億円と予想できるでしょう。
ただ、休園が半年間(180日間)になったとしても、540億円ですから、こちらも手元の資金で十分手当てできるはずです。
理由2 通常の審査は不要! 破格の融資枠「2,000億円」
さて、冒頭で紹介した「2,000億円の融資枠」について見ていきましょう。
メディアの報道によると、オリエンタルランドはみずほ銀行などとの間で、総額2,000億円のコミットメントライン(融資枠)を設定しました。
これは新型コロナウイルスの流行が長期化したときに備えて、手元の資金を厚くしておくためです。
決して、経営的に苦しいからではありません。
しかもこの融資枠は、もしお金が必要になったときに、所定の審査なしで借りられる…というもの。
今は手元資金が十分ありますので、すぐに借りる必要はないのです。
ただ、この2,000億円は、かなり大きな金額だと言えるでしょう。
今回の新型コロナウイルスの影響で、服飾大手のオンワードは200億円、不動産賃貸の大東建託は700億円の融資枠を設定しています。
あの日本航空ですら、ほかの融資と合わせても、全体で3,000億円規模。
オリエンタルランドとしては、新型コロナウイルスの影響でさらに休園が長期化したり、再開後に客足が伸び悩んだりしても問題ないように、これだけの金額を設定したのでしょう。
ちなみに、オリエンタルランドの副社長を務める片山雄一氏は、みずほ銀行出身です。