『BASTARD!!‐暗黒の破壊神‐』
萩原一至
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さて。もう一つ、『HUNTER×HUNTER』の遥か上をいく伝説的な作品がファンタジーバトル漫画『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』だ。1988年に週刊少年ジャンプで始まり、現在は月刊ウルトラジャンプで不定期連載中。今年で連載25周年、なのに最新コミックスは27巻までという、ジャンプ漫画とは思えないゆっくりした刊行ペースである。

序盤はそれこそ週刊連載とは思えない超絶クオリティで読者をうならせたが、やがて体調不良を理由に季刊誌へ移籍。週刊少年ジャンプに出戻りしたり月刊ウルトラジャンプに移籍したりで現在に至る。休載が目立ってきた当初は腰痛と発表されていたが、今も同じ状況なのかは不明。不定期連載とされているが実質的には連載がほぼ完全にストップしており、下書きのまま掲載されることも。「いつ決着が付くのか」「エピソードがあちこちに飛ぶので理解できなくなった」など、これまたファンを悩ませている。

この2人の作者は壮大なストーリー構成や魅力的なキャラクター、卓絶した作画力など、並の漫画家には真似できないオンリーワンの才能が見受けられる。そのため多くの熱狂的ファンを抱えているわけだが、同時に「才能と人気さえあれば下書きで掲載してもオッケー」というジャンプの悪癖を定着させた2大戦犯として、ネット上では忌み嫌う人も多い。悔しいことに『HUNTER×HUNTER』は下書き状態で読んでも非常に面白いため、今後もさまざまな議論を呼び起こしそうだ。
 

トラブルから休載になったケース

『黒子のバスケ』
藤巻忠俊
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病気ではなく、作者と「誰か」とのトラブルが原因で休載となったケースも意外に多い。この場合「誰か」とはファンであったり編集部であったり、また原作付き漫画では共同制作者とのトラブルだったりする。

ファンからの影響で休載となった例は、以前の記事『「黒子のバスケ」脅迫問題にみる、“リアル”に影響を与えた漫画の出来事』 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/11086?page=3 ] で紹介しているので参照いただきたい。

現在、こっち方面で一番心配なのは『黒子のバスケ』だ。今年に入っても依然として脅迫事件が続き、つい先日もまたイベントが中止になったばかり。作者はそれでも読者の期待に応えようと奮闘しているが、週刊連載を続けながら脅迫行為のストレスに耐え続けるのは相当厳しいことだと思われる。作者の藤巻忠俊氏がダウンしてしまう前に、なんとか警察には犯人を捕まえていただきたい。

 
『しろくまカフェ』
ヒガ アロハ
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他にも理不尽な理由で休載となった漫画には、最近だと『しろくまカフェ』がある。アニメ化の際にまったく原作者(ヒガアロハ氏)が意見を述べることを許されないばかりか、自分が原作のはずなのに“しろくまカフェの情報はネットで知る”悲惨な状況だったという。また、原作無視のアニメを放映されただけでなく、契約書すら作成されていなかったことも発覚。これでは作者が描く意欲を失うのは当然である。

以前に佐藤秀峰氏のインタビュー(記事『映画は70億円超ヒット! 『海猿』の原作者にはいくら入るのか、佐藤秀峰本人に聞いた』 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9165 ] ) でも感じたことだが、つくづくこの業界は漫画家の使い捨てが酷い……。クリエイターの権利をきちんと守れないような編集部に存在する意義はあるのだろうか?