GAN
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さらに今年に入り、ミステリアスな休載騒ぎも起きた。まんがタイムきららMAXで連載されていた4コマ漫画『Free!』が、作者のGAN氏いわく“のっぴきならない事情で”突然休載となったのだ。このお茶を濁した表現のため、ネット上ではさまざまな憶測を呼んだ。
ちょうど同タイミングで京都アニメーションが新作アニメ『Free!』(GAN氏の漫画とはまったく別物)制作を発表したため、「商標関連もろもろで作者にアニメ業界から圧力がかかったのでは?」との説も根強い。しかし公式な情報がどこからも出てきていない以上、真相は闇の中である。
編集部の“自主規制”が原因で休載、そして移籍騒ぎとなった作品もある。月刊ウルトラジャンプで掲載されていたSFバトル漫画『銃夢 LastOrder』だ。連載100回を迎え、ストーリーも盛り上がってきたところで突然の休載。しばらくしてから、なぜか講談社のイブニングに連載の場を移行した。
これを知った時は「なんでだ!?」と混乱したが、真相は作者・木城ゆきと氏のブログサイトに書かれていた。
簡単に経緯をまとめると、『銃夢 LastOrder』の新装版コミックス収録にあたり、編集部から“セリフの一部に問題”があったと申し出て、木城氏がそれに納得できなかったからだという。集英社の法務と編集部が問題視したセリフは「発狂」「サイコ野郎」の2つ。発狂という言葉は精神障害に結びついてしまい、サイコ=サイコパスも精神障害に含まれるからNG、別の表現に変更したい……そんな言い分らしい(詳細なやりとりは上記リンクを参照)。
似たような表現規制のエピソードは『ジョジョの奇妙な冒険』にもあった。イタリアを舞台とした第5部で、あるキャラクターの発した「ド低能」というセリフが問題となったのだ。該当部分は文庫版の収録にあたって「クサレ脳ミソ」に変更されて発売となった。ファンからすれば逆に変更後のほうが酷くないか?とすら思えてしまうあたり、出版社の規制基準はよく分からない。ちなみに普段はイギリス紳士並みに温厚な荒木飛呂彦氏も、この時ばかりはよほど立腹していたのか、珍しく露骨に不快感を示すコメントを出している。
たまたま集英社の例が続いたが、似たような話は他社の作家たちからも伝わっている。作家の当然の権利すら守らず使い捨てて、逆に編集部は保身のためにあっさりセリフを変更する――日本の漫画業界はこれでいいのだろうか? いずれ機会を得れば、作家・編集者の双方にインタビューして“漫画の表現規制”を掘り下げてみたい。