ムーン・プリズムパワー! メイクアップ! ――20代、30代の女子なら、誰もが一度はこのセリフを口にしたことがあるはず。あの頃、セーラー戦士に憧れていた少女たちもすっかり大人になって、誕生から20周年を迎えた今年9月、『美少女戦士セーラームーン』がミュージカルで復活するんです!

『美少女戦士セーラームーン』は、1992年2月より少女マンガ雑誌『なかよし』で連載された、武内直子原作の少女マンガ。同年3月にアニメ版の放送がスタートすると、瞬く間に日本中の少女たちをトリコにしました。そして、1993年にはミュージカルが、2003年には実写ドラマも制作されています。

特にミュージカルは原作連載中から、連載終了後の2005年までに27作、847公演が上演され、最長寿のシリーズとなった。『セーラームーン』が一過性のブームに終わらず、今も幅広い世代、世界中の少女から愛されているのは、ミュージカルの影響も少なからずあるはず。そんな『セーラームーン』のミュージカルが、キャスト・スタッフをほぼ一新して、新たなスタートを切ります!

原作担当編集の小佐野文雄さんと、今回のミュージカルのプロデューサー、片岡義朗さんに、『セーラームーン』誕生秘話と、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン-La Reconquista-』の見どころを聞きました。

“おさぶ”が語る、『セーラームーン』誕生秘話

――20年を経ても、なお愛され続ける『セーラームーン』。当時、その制作裏ではどんなエピソードが繰り広げられていたのでしょうか? コミックスのあとがきに“おさぶ”の愛称で登場して、武内先生とのやり取りが描かれていた小佐野さん。原作連載当時の思い出を教えてください。

小佐野:最初、武内先生から登場する5人の戦士をすべて美少女にしたい」と言われたとき、反対したんです。主人公を引き立てるためにほかのキャラクターがいるんだし、ドラマをつくるにしてもさまざまな個性のキャラクターがいた方がいいに決まってる……。

だけど、武内先生がコスチューム姿のセーラー戦士たちを描いてきてくれて、それを見たときに「これはもしかしたら、アリかも!」って思ったんです。まさか20年経って、最初に反対したことを何度も反省しなきゃいけなくなるとは思ってなかった(笑)。
 

――そこから原作の連載がスタートするまで、どのくらいの期間があったのでしょうか?
 

小佐野:実質3ヵ月です。原作連載開始の翌々月から、アニメの放送がスタートすることも決まっていたので、それに合わせて設定やストーリー、『セーラームーン』の全部を決めないといけなかった。その間に、武内先生は『The チェリー・プロジェクト』も並行して連載していたので、ほとんど毎日打ち合わせをしていたように思います。
 

――わずか3ヵ月で、『セーラームーン』は生まれたんですか!?
 

小佐野: もう一瞬でしたね。ドタバタしながらつくっていたから、ガードが甘いところもあります。矛盾というよりは、設定を考えきれていない部分があるんです。でも、そういうところがファンに想像させる余地を与えて、『セーラームーン』は広く愛されるようになったようにも思います。もちろん、ヒットした一番の理由は、武内先生がエネルギーに溢れていて、その勢いがタイミングよく、世の中に広がっていったからだと思っています。
 

――片岡さんは今回、初めて『セーラームーン』に携わられるとのことですが、当時からご存知でしたか?
 

片岡:当時、僕は『なかよし』を毎月読んでいて、『セーラームーン』の連載が始まったときには「凄いマンガが出てきたな」と思いました。女の子5人が団結して、悪と戦う。強い女の子と、彼女たちの友情が凄く印象に残っています。それからすぐにミュージカル化されたのも納得でした。ミュージカルでも、セーラー戦士たちは強く、格好よくて、もちろんストーリーもおもしろかった。
 

――『セーラームーン』の原作、アニメは準備期間が3ヵ月だったとのことですが、今回のミュージカルでは、じっくりと打ち合わせをされたのでしょうか?
 

片岡:あんまりハッキリ打ち合わせをした記憶がないんです(笑)。今回のミュージカルでは原作から離れるつもりは全くなくて、あえて聞かなかったというか。コミックスの1巻から3巻までのダークキングダム編のストーリーを基軸にして、そこに時代が動いた分だけ新しい要素を取り入れたり、舞台用のストーリーを脚色して組み込んでいます。
 

小佐野:脚本・演出の平光琢也さんは、1994年から1998年までのミュージカルも担当されていて、ファンのツボをしっかりと心得ている方です。今日、初めての読み合わせがあったんですけど、原作を担当している僕も感動して、ウルッとしちゃうところがあって……。前作のミュージカルや原作、アニメファンも期待できる内容だと思います。