――ほかに最近シーンに関して何か思うことはありますか?
小嶋:やっぱり「不景気」なんだな、とよく思います。どうしてかといいますと、バンドやってる人とかって、「自分には音楽しか無いから、これに懸けるしかない」っていうエネルギー良い方向に転がっていった時代もあると思うんです。
だけど、今はわりと「音楽しか無い」っていうバンドのほうが、脆いというか、切羽詰まって冒険できない。そうなってくるとどうなるかというと、出るライブハウスとかや出るイベントを慎重に選びますよね。結成したばかりのバンドでも「とりあえずライブやろうよ」じゃなくて「動員のあるイベント、バンドがでるブッキングに」って感じなんです。
ウチにデモテープを送ってくれるバンドと話してても、そういう空気を感じるというか。なかなかみんな慎重なんだなって。まだライブも観たことないバンド、音源しか聞いたことないバンドとかに対して、意地悪とかじゃなくっていきなり良いイベントに入れたりはできないじゃないですか。その新人のバンドさんにとっては良いことかもしれないけど、たとえば100人くらい入るバンドと、新人さんのバンドが当たることに意味はあるのか? ということになってしまうので。
最初からそれを求めるのは効率的なのかもしれないけど。なんだか音楽に人生を賭けている人ほど冒険できなくて苦しいのかなって思ったりします。たとえば燭台(怪)とかは会社員として働いてるし。もちろん、だから大変だっていうことも多いと思うんですけど、その分「土日はバンド、平日は仕事」って住み分けされてるのかなって。だから「土日は好きなコトやろうよ」ってできるのかもしれない。もちろん逆境からいい作品が作れる人もいるとは思うんですけど。
――バンドをやりやすい世の中になるといいですね……。
小嶋:CDが売れなくなったとか、ライブハウスにお客さんが入らなくなったと言われるようになってだいぶ経ってますけど。ライブハウスも経営難みたいな話を聞きます。ライブハウスも余裕が無いんですよね。
バンドに余裕が無いのと同じで。ライブハウスに余裕が無いと、攻めたブッキングができないというか。「こいつらは凄い!出したいけど客がついてないしな……」ってなっちゃうと、攻められない。
――実績のあるバンドじゃないと、となってしまう?
小嶋:こっちもスタッフを食べさせて行かないといけないのでどうしてもそうなっちゃいますよね。
ライブハウスのノルマって本来は「このくらいの人数呼ぼうよ」くらいのものだったと思うんですけど。……ノルマ論争をすると炎上するらしいんで、あんまりアレですけど(笑)。今は本当に最低保証というかライブハウスが損をしないような仕組みになっていってると思うんです。
ライブハウスが損をしないように、というと語弊があるかもしれませんが、やっぱり公演があったらその分人件費が発生するし。誰が来ても演奏できるように、機材のメンテナンスだって必要です。けしてライブハウスが不当に搾取をしているわけではないと思うんです。だけど動員の無いバンドに「ノルマ10枚かけていい?」という風になってくると、ライブをやってもお客さん呼べないし、「10枚だったら2万くらいバンドが自腹で払えばいいか」となり、そういうバンドが増えたら、さらにお客さんが入らなくなるし……となると悪循環ですよね。
――観てる方の立場で言うと、名前も聞いたこと無いバンドをいきなり観に行くにも腰が引けるというか、ある意味お客さんも冒険できないというところもあるかなと思います。
小嶋:いつ行っても「面白いバンドが観れるんじゃないか?」と期待させるようなブランド力がライブハウスにないとキツいのかもしれない。「エクスプロージョンに行けば毎回面白いものが観れるよ」という空気が根付けば、いいんですけどね。
バンドとライブハウス運営に関しても、どちらも余裕が無いと面白いものが作れないという部分は共通すると思いますし、それをどうしたらいいかなって考えてたら、もう企画力しか無いかなって。
ライブハウスも必死で頭使って良いバンドをそろえて、それを面白がってくれるお客さんを増やすっていう、当たり前のことを当たり前にやらないといけないと思うんです。