日進月歩で進化し続けるIT技術。今後ますますコンピューターが欠かせない社会になっていくと予想される中、コンピューターに興味を示している幼児を持つママや、理系の子に育てたいママは、早期から子どもにプログラミングを学ばせたいと考えているかもしれません。
そこで今回は、プログラミング・IT関連の書籍を多数執筆し、NHK Eテレ『趣味どきっ!』などで初心者向けのパソコン・ITの講師も務める、中央大学総合政策学部准教授の岡嶋裕史(おかじま ゆうし)先生に、子どものプログラミング勉強法について伺いました。
子どもにプログラミングを学ばせるならリーダーを目標に!
岡嶋先生によると、子どもにプログラミングを学ばせる場合、「目標」を持つといいそうです。
岡嶋裕史先生(以下、岡嶋)「プログラマーといっても、アクロバティックな論理を駆使するようなプログラムの需要はごく一部に限られています。現実には、顧客や上司が示した仕事の指示(日本語)を、コンピューター向けの指示(プログラミング言語)に置き換えていく翻訳作業であることがほとんどです。
よって、プログラミングは意思決定者、リーダーとして生きていくための基礎教養として学ばせるのがよいと思います。自分でプログラムを書くことはなくても、自分のプロジェクトでプログラムを書く部下は確実に抱えることになるからです。
そうした基礎教養を身につけておけば、さまざまなプロジェクト、部下、新しい技術の波に対応することができます。一過性の流行技術を習得するのとは異なり、長きに渡って役に立ち続ける強靱な知的基盤になります」
プログラミングを楽しく学ばせるコツは?
大人からしても、プログラミングは少々難しそうで、子どもにはハードルが高すぎるように思えてしまいます。子どもたちが楽しく学ぶためのコツはあるのでしょうか。
岡嶋「ぜひ何回も失敗させてあげてください。現代においては、大学生から小学生に至るまで、失敗を恐れ、人生を効率的に成功させようとします。アクティブラーニングのような能動的な授業が流行していますが、それでも講師が正解を言うまで手を動かし始めない子どもがたくさんいます。
それはもちろん合理的な思考ですし、経済的なことや親のことを思うと『絶対に失敗したくない』とよく大学生たちも言います。しかし、失敗から学べることもまた多いのです。
仮想世界であるコンピューター上では、失敗を繰り返しても誰も怒りません。単に正解に導くだけでなく、何回も失敗させ、正解を自分でつかみ取るような経験をさせてあげてください。ゲーム感覚でできる、子ども向けプログラミング言語もたくさん登場していますので、ここから入門するのもよいと思います。アルファベットがわからない幼稚園や小学校低学年の子でも楽しく学べます」
プログラミングを低学年から学ぶメリット
プログラミングを小学校低学年から学ぶことで、子どもたちにはどんなメリットがあるのでしょうか。
コミュニケーション能力が向上
岡嶋「コミュニケーション能力が向上します。1人作業でコミュニケーションと背反するように捉えられがちですが、プログラミングは先にもお話したように、人の言葉で書かれた指示(日本語)を、コンピューターへの指示(プログラミング言語)に置き換える作業です。翻訳作業や会話がそうであるように、単に文法を知っていればよいのではなく、相手の文化や理解度を把握しないと正しく意思の疎通ができません。
コンピューターは指示待ちするだけで、しかも理解力が低く、アドリブがききません。そういう相手に対して、『どんな言葉なら理解できて』『どんな考え方をしているか把握して』『それにあわせて指示を考え組み立てる』のは、コミュニケーションの基本です。
ダイバーシティーなどに代表されるように、多様な考え方、人種、宗教、国家観などを持つ人と付き合っていく必要のある現代社会において、必須の能力であると考えられます」
論理的思考能力が向上
岡嶋「また、コンピューターは論理機械で、論理の通りに動いてくれます。言い換えれば、論理的でない指示にはまったく従わないので、論理的思考能力の向上にも役立ちます」