キケンな書き込みは違法?――弁護士に聞いた

今回は新しくてタイムリーな事例、古くても有名な事例だけを挙げてみたが、似たような書き込みはネットのいたるところで見られる。では、このように"キケンな質問"を書いたり、それに対して具体的な回答を寄せたりすることは違法なのだろうか? 新宿区にある小川綜合法律事務所の所長・小川義龍弁護士に話を聞いてみた。
 

結論から言えば「こうした質問をすること自体は違法ではありません」。たとえ犬の死体処理相談が人間のように解釈できても、これから人の死体を処理しますと書いても、被害者がいなければ、書き込むだけでは罪に問われないのだという。

詳しい死体の処理方法を回答した人間についても同様だ。「不道徳な書き込みであっても、殺人方法の表現は罪に問われません」とのこと。言われてみればたしかに、書店に行けば“自殺マニュアル”や“殺人術”の本が簡単に購入できる。水酸化カリウムの入手方法や息子のタマタマの潰し方を掲示板で回答しても、法的には問題ないわけだ。

「むしろ管理者側の問題とも言えます。法的に責任はなくても、そうした書き込みを長期間放置したとなれば、道義的な責任を問われるケースはあるでしょう。しかし一方で、インターネットにはいろいろな意見が載っているほうが良いという見方もあります。――法律と道徳のせめぎ合いですね」と小川弁護士は語る。

もちろんネット上の表現がある程度自由だからといって、特定の人を誹謗中傷したり脅したりする書き込みや、殺害予告・爆破予告のように特定の人や場所を危険におとしめるような書き込みをすると罪に問われる場合があることは十分に注意すべきだ。「○月○日に△△駅前で大量殺人を実行する」などは書き込むだけでアウト。また、質問者が実際に殺人を犯して事件になった場合は、やり方を教えた回答者が従犯(犯罪の実行を助けた者)として法に触れることもあるという。

いずれにせよ小川弁護士の話にもあるように、インターネットは法に触れるかどうかではなく、道義的な責任を念頭に置いて利用すべきだろう。不快に思ったり恐怖に感じたりする人がいるならば、その書き込みは控えたほうが賢明だと分かるはずだ。


【取材協力】
弁護士 小川義龍(おがわよしたつ)
昭和39年生。早稲田大学卒。平成3年司法試験合格。東京四谷にある小川綜合法律事務所所長。個人や企業の法律全般を取り扱うが、離婚・男女問題、相続などの家事事件、各種損害賠償、契約、会社法務、IT関連事件などを得意とする。法律相談 は初回無料。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。