「そんなに嫌だったら、学校なんか行かなくていいよ」
そう述懐する原監督に「原作ファン以外では、どんな人にこの作品を届けたいですか?」と聞くと、「中高生が共感してくれるとすごく嬉しいですね」という言葉が瞬時に返ってきた。
「居場所がないとか生き辛いとか、親や友だちとうまくいかないとか、そんなことはどうでもいいんだよと思って欲しい(笑)。
『そんなに嫌だったら、学校なんか行かなくていいよ』って僕も言ってあげたいですね。
でも、『学校に行かない代わりに、自分のやりたいことをやれ!』って伝えます。
『旅が好きなら旅をして来い!』とか『映画を観まくれ!』『本を読みまくれ!』とかね。
その方がよっぽどためになると思うんですよ。中学時代の僕も映画はすごく観ていました。親が好きだったからなんですけど、僕がいまこういう仕事をしているのは、間違いなくその親の影響ではあるんです」
映画で描かれる、ヒロインこころの大きな変化
これから観る人の鑑賞の妨げになるので詳しくは書けないが、映画『かがみの孤城』のクライマックスでは自分の居場所がなく、毎日の生活に生き辛さを感じていたこころの大きな変化を見ることができる。
原作者の辻村もアニメーションになったときの映像をイメージしながら書いたと公言している重要なシーンだけに、原監督のこだわりもひとしおだ。
「絵コンテを描き進めながらラストシーンをどうしようか?ってずっと考えていて、あれを思いついたんです。
こころが暗闇の中を重い足取りで歩くところから映画が始まるので、最後はそうじゃないものにしたくて。
この映画では光の階段を駆け上がるシーンなどで“歩み”を意識的に入れているんですけど、あのラストシーンに向けて物語を紡いでいけば上手く着地できると思ったんです」
それがどんなカタチになってスクリーンに表れるのか?
それは自分の眼で目撃して欲しいが、現実の世界と鏡の世界を何度も往来しながら繰り広げられるこころの数奇な旅が、あなたの心もきっと明るく照らしてくれるに違いない。
映画『かがみの孤城』 12月23日(金)公開
2018年本屋大賞を史上最多得票数で受賞した辻村深月のベストセラー小説「かがみの孤城」。
子どもから大人まで幅広い世代に愛され、累計発行部数が170万部を突破したこの人気ファンタジーミステリーが、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』などを手掛けた原 恵一監督により劇場アニメ化!
當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴、芦田愛菜、宮﨑あおいなど豪華声優陣を迎え、映画初主題歌となる優里の「メリーゴーランド」が本編を彩る。
【STORY】
学校での居場所をなくし、部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこには不思議なお城と見ず知らずの中学生6人が。
さらに「オオカミさま」と名乗る狼のお面をかぶった女の子が現れ、「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。期限は約1年間。
戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。
互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。
そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う――。
果たして鍵は見つかるのか?なぜこの7人が集められたのか?それぞれ胸に秘めた〈人に言えない願い〉とは?
すべての謎が明らかになるとき、想像を超える奇跡が待ち受ける