遺言がない場合
谷靖介さん(以下、谷)「母親の遺言がない場合、『法定相続分』に従って、3人均等に遺産を受け取れるのが基本です」
ただし、例外はあると谷さんは話します。ここでは3つのケースについて教えていただきました。
1.特別受益を受けた場合
谷「3人の誰かが『特別受益』という生前贈与や遺贈を受けた場合です。
例えば、典型的なのは、家の購入費用の補助や数百万円などのまとまった生活費の贈与です。これは遺産の前払いとして扱うので、遺産分割の際、その人が受け取る金額は減ります」
2.寄与分がある場合
谷「3人の誰かが無償で介護や家業の手助けをして、遺産が減るのを防いだり、遺産を増やしたりした場合、『寄与分』というものが生じます。
寄与分のある相続人は、その貢献の分、他の相続人より遺産を多く受け取れます」
3.相続放棄や相続分譲渡があった場合
谷「3人の中に相続放棄をしたり、自分の相続する権利を別の人に譲る相続分譲渡をした人がいると、受け取る割合が変化します」
遺言がある場合
谷「遺言があると、遺言のとおりに遺産を分けることになります。ただし、遺言内容によって、少ない財産になってしまうこともあります。
その場合、法定相続分の半分(6分の1※)以下であれば、相続人は『遺留分』というものの請求が可能です」
※相続人が子ども3人の場合、遺留分の合計は遺産の2分の1と民法で定められている。子どもは3人なので、1人あたりの遺留分は、遺留分の合計の3分の1となる。よって、「2分の1×3分の1」で遺産の6分の1となる。
例えば遺産の合計額が3億円だとすると、子ども1人あたり少なくとも6分の1の5千万円を遺留分として請求できる。
不動産であることから、分けるのが難しい場合
谷「不動産が遺産の多くを占め、分けるのが難しい場合、(1)1人が不動産を取得し、もらいすぎた分、他の相続人にお金を支払う『代償分割』や、(2)不動産を売却して、その売った額を分ける『換価分割』などの方法をとります。
不動産を相続人同士の共有にする方法もありますが、さらに下の代が相続したときにトラブルになりやすく、あまりおすすめはできません」