相続トラブルが起きないようにするには?

兄弟姉妹の相続だけでも、さまざまなパターンがあると知ると、ますます不安になりますよね。そもそも、相続トラブルが起きないようにするには、どんな準備が必要でしょうか。アドバイスいただきました。

谷「相続トラブルが起きないようにするために重要なことは、親に判断能力があるうちに、家族で相続についてしっかりと話し合うことです。

財産目録(財産リスト)を作っておくことも有効です。亡くなった本人だけが財産を把握していると、相続人はどんな遺産があるのかを調べるのが大変です。

また、元気な親を交えて、持ち家を売るのか、相続人の一人に継がせるのか、預貯金を誰がいくら取得するかなどを話し合うことが重要です。親に作成する気があれば、法律的に財産を承継しやすい文言で書かれ、保管方法が優れている公証役場での公正証書遺言の作成もおすすめします。

事前の話し合いや情報共有がしっかりなされていれば、『財産を管理していた相続人が、親の亡くなる前に遺産を使い込んだのではないか』『隠している遺産があるのではないか』『財産の分け方で親はこう望んでいたはずだ』などと、親族間で対立する場面も減り、相続トラブルを防ぎやすくなります」

親の判断能力が低下してきている場合、なかなか話し合いは難しいものです。そんなときにはどうすればいいのでしょうか?

谷「もし、親の判断能力が低下してきて、任意後見人や成年後見人がおらず、家族が親の預貯金を管理する場合、年金収入や医療介護費や生活費の引出しなど、親の預貯金の変動情報を適宜、家族と共有することが重要です」

知っておきたい!妻が義父母の介護で「特別寄与」を受けるには

ところで近年は、義父母の生前に介護をしていた妻が、相続人ではないけれど遺産を受け取れる「特別寄与」の制度ができました。適用されるにはどうすればいいのでしょうか?

谷「相続人以外の親族の特別寄与が認められるには、まず、無償で介護していることが必要です。介護の対価としてお金などを受け取ると、特別寄与とはなりません。

また、妻が介護をすることで介護サービス利用料が節約できたなど、義父母の財産が減るのを防いだり、財産を増やすことにつながったと言えることが必要です。精神的な支えのみでは、特別寄与とは認められません。

特別寄与の請求期限は、義父母が亡くなったことと相続人を知ったときから6か月、または義父母が亡くなってから1年のうち、いずれか早いほうです。相続人との協議が難しい場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて、特別寄与料を請求できます」

近い将来、相続を受ける人は、今回の内容を参考に、相続トラブルを回避したいものです。また義父母の介護を行っている場合、特別寄与についても知識を持っておくと良さそうです。

【取材協力】弁護士 谷 靖介(たに やすゆき)さん

弁護士法人リーガルプラス
遺産分割協議や遺留分に関するトラブル、被相続人の預貯金使い込みや遺言内容の無効主張など、相続紛争問題を中心に、法律を通してご依頼者の方が「妥協のない」「後悔しない」解決を目指し、東京都を中心に活動を行っています。

【参考】
三井住友信託銀行「相続に伴う家計金融資産の地域間移動」