子どもに「脱毛したい」と言われたらどうする?

ところで、もし小学生の我が子から「脱毛したい」と言われたら、正直、悩ましいところですよね。対応方法のヒントを、現役の小学校の保健室の先生であり、思春期保健相談士でもあるmapiさんにうかがいました。

mapiさん(以下、mapi)「小学校の保健室でも『毛を剃ったことがある』『剃ったら毛が太くなってきた気がする』などの相談を受けることが増えてきました。日々、保健室で行う健康相談活動では、以下の5つを意識し、子どもたちと話をするようにしています」

1.本人の意見を受け止める

例「脱毛したいと思うんだね」

2.理由を尋ねる

例「脱毛しようと思ったのは、何か理由があるの?」

3.知識があるなら、メリットとデメリットを伝える

例「○○ではこのように言われているよ、今の年齢だと○○なリスクもあるらしいよ」

4.分からない場合、一緒に調べる

例「わたしも詳しく知らないから、一緒に調べてみようか」

5.「私は」を主語にした『I(アイ)メッセージ』を伝える(必要なら正しい情報を添える)

例「わたしは、○○だと思うな」

mapi「大人も同じですが、最初から自分の意見を否定されたら、悲しいですし『これから相談しにくいな』となりますよね。また、自分の意見を理解しようと耳を傾けてくれる存在は、子どもたちにとって『安心して話せる相手』と信頼してもらえるのではないかと考えます」

親が避けたい対応例

では、反対に子どもから「脱毛したい」と相談されたときに、避けたほうがいい対応は?

mapi「話を聞かない、一方的に否定をする、自分の考えを押しつける、事前に調べず脱毛を促す、お金だけ払うというのは避けるべきです。

ちなみに、最近は海外などでも『自然なままの姿を大切にしよう』という風潮もあります。日本でも『#剃るに自由を』というキャンペーンがあるなど、毛の処理をしない主義の女性も増えてきています。

大人から『毛が濃くなってきたよね』『昔はもっとつるつるだったのに』など体の変化に対する声かけをして、子どもにネガティブなイメージを与えるのではなく、『ありのままの自分がステキ!』『体の変化って気になるよね…私もそうだった~』など、温かい声かけを意識していただければと思います」

子どもの「ムダ毛悩み」「脱毛希望」に関して悩む親へのメッセージ

最後に、子どものムダ毛悩みや「脱毛をしたい」という発言や行為に対して悩む親に向けて、メッセージをいただきました。

mapi「『毛をなくしたい』『毛が生えてるの、いやだな』と一度でも思ったことのある方は多いかと思います。そして、もしかしたら、今後は子どもの脱毛という選択肢を選ぶ家庭は増えていくのかもしれません。

ただ小学生というのは、正しい情報やメリット・デメリットを調べて判断する力は、まだまだ未熟です。身近な大人ができることは『困ったときに、聞くことのできる存在であること』『正しい情報を扱っているサイトや本、病院を知っておくこと』ではないでしょうか。

同時に、『ありのままのあなたを大切に思っている』というメッセージを伝えることを意識していただきたいです。

もしかしたら、周りから毛が生えてきたことを、人からからかわれた、SNSで見た、毛が一つも生えていないようにみえるアイドルや芸能人を見て憧れたという経験をしたのかもしれません。小学生で『脱毛をしたい』という考えに至るまでの経過を想像し、丁寧に対応することをおすすめします。

『毛が気になる』という一言をきっかけに、体について一緒に話せることは、子どもたちが必要な性教育を学ぶきっかけになります。性教育とは『安全教育・人権教育・健康教育』です。私自身も、子どもの悩みに耳を傾けていける親であり、保健室の先生でいたいと日々思っています」

子どもから、ムダ毛の悩みを打ち明けられたことがないという人も多いでしょう。けれど、多かれ少なかれ、子どもは何かしら、ムダ毛に関する悩みは抱えているものです。今回教えていただいた内容は、悩みを打ち明けてきたときにはもちろん、日頃の対応や手段のヒントになりそうですね。

【取材協力】

磯野 宏貴さん
フレイアクリニック総院長
臨床研修医、小児科医を経て、現在はフレイアクリニック総院長として従事。最近では、思春期の子供の医療脱毛へのニーズもあり、親権者の方々にも安心していただける、親子が笑顔になるサービスを提供していくことに情熱をかけている。

養護教諭 mapiさん
「自分が納得できる正解を」をモットーに現役の保健室の先生として小学生と関わる。思春期保健相談士、睡眠コンサルタントの資格を持ち、性教育や眠育に力を入れる。