幕開けは『ムーンライト伝説』が告げる“お約束

そして翌年1994年公開『劇場版 美少女戦士セーラームーンS』のエンディングテーマは『Moonlight Destiny』。

同作ではうさぎのパートナーである黒猫のルナを主人公に、人間の男性への淡い恋が描かれました。

原作者の武内直子先生が書き下ろしたストーリーとなっていて、『Moonlight Destiny』はそんな切ないラブストーリーによくマッチした、ミディアムバラードのナンバーとなっています。

『“らしく”いきましょ』も収録されている、『美少女戦士セーラームーン The 30th Anniversary Memorial Album』ジャケット。

3作目『美少女戦士セーラームーンSuperS セーラー9戦士集結!ブラック・ドリーム・ホールの奇跡』(1995年)のエンディング主題歌は『Morning Moon で会いましょう』。

同時上映の短編『亜美ちゃんの初恋』は水野亜美を主人公としたエピソードで、同作の主題歌『“らしく”いきましょ』では武内先生が作詞を手がけました。

セーラー戦士たちの年頃の女の子としての“戦士ではない”日常が描かれる名曲です。 なお1990年代に公開されたこれら劇場版3作のオープニング主題歌は、いずれもTVシリーズと同じく『ムーンライト伝説』でした。

『美少女戦士セーラームーン』といえば鐘が鳴り響くあのイントロのイメージを持っている人も多いと思いますが、劇場版でも共通した“お約束”として、この曲が物語の始まりを告げる役割を担っていたのです。

28年後の新作で『Moon Revenge』へ向けられたリスペクト


時は流れ、『美少女戦士セーラームーン』の20周年を記念して2014年に新作アニメシリーズ『美少女戦士セーラームーンCrystal』が始動。

原作の第3部までが配信アニメとTVアニメとして展開されたのち、第4部は『劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」』(2021年)として前後編で劇場公開されました。

アニメ「劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』」キービジュアル

『Eternal』の主題歌は3曲あり、前後編共通で使用されているのが、ももいろクローバーZとセーラー5戦士が歌う『月色Chainon』。

ももいろクローバーZは『美少女戦士セーラームーンCrystal』のオープニング主題歌『MOON PRIDE』とエンディング主題歌『月虹』も担当し、『美少女戦士セーラームーン』の新たなアニメシリーズの始まりに花を添えていました。

『月色Chainon』は『月虹』と同じく、作詞に白薔薇sumire、作曲は小坂明子とクレジットされていますが、実は白薔薇sumireとは武内先生のペンネーム!内に秘めた女性らしい強さを描いた、華やかな楽曲に仕上がっています。 残る2曲の主題歌は、《前編》が『私たちになりたくて』、《後編》が『“らしく”いきましょ』。そう、いずれも90年代アニメで使用されていた名曲のカバーです!

『私たちになりたくて』を歌うのは、多くのアニソンランキングで常に上位に入る人気曲『乙女のポリシー』の石田燿子さん。そして『“らしく”いきましょ』は、バンダイ版ミュージカルで初代セーラームーン役を演じていたANZAさんがカバーしました。

いずれも作品との関わりが強いアーティストが関わっており、往年のファンの心もくすぐられます。 『Eternal』で特筆すべきは、劇中歌『Moon Effect』の存在です。

『Eternal』の今千秋監督は、『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』の『Moon Revenge』が自身の原点にあると語り、「『Moon Revenge』のようにシーンを熱く盛り上げる楽曲が欲しい」と、作曲担当の月蝕會議にリクエストしたといいます。

実際、『Eternal』の最終決戦のシーンでは『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』における『Moon Revenge』のように『Moon Effect』が1曲丸ごと使用されており、女王ネヘレニアとの激しい戦いを盛り上げました。

『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』に感動した人には、必ずチェックしてほしいシーンです。