今は長く活動しているバンド、復活するバンドも多いですけど、そういう上の世代が一番かっこいいという状況じゃあダメなんですよ。

もちろんそういう方はずっと活動してきてスタイルが確立されてるっていうのはあると思うんですけど、彼らは彼らで「さらに上の世代」を打ち破って今の位置にいらっしゃるわけですから。だけど、彼らに勝てる片鱗みたいなものが、1ミリも今のシーンには無いんですよね。

少子化で若者の数がそもそも少ないみたいなところもあると思うんですが、そんなの関係ないじゃんっていつも思います。

――たしかに昔の人気バンドのように「武道館だ!」「ドームだ!」という規模でやっていくのは、今は限られますよね。

RYO:SUKE:でもマーケットの大きさとコンテンツの質って別問題でしょう。でもそこに誰も挑戦してない。

それに上の世代の人達は、存在しなかったところにシーンを生み出したわけじゃないですか。「ヴィジュアル系」って呼ばれてるシーンを。「どうしたら新しいことが生まれるんだろう?」ということを常に考えていたと思うし、その上で時代に対して評価されるにはどうアプローチすればいいんだろうと、その両側をちゃんと考えていたというか。

だから上の世代が今一番かっこいいという時代を、早く終わらせないといけないなって。僕やそれ以下の世代は、もっともっと野心や問題意識をもっていかないと次の世代には続かないなって。

――WING WORKSにはそれを見せてもらいたいなと思います。

RYO:SUKE:どんなに時間がかかっても僕はこのスタンスで評価されるまで、やり続けていくつもりです。

――以前別のインタビューで仰ってたのを拝見したのですが。RYO:SUKEさんは「中二病」という言葉が良くないとおっしゃっていたじゃないですか。やっぱり「中二病」というとどうしても「(笑)」がついてしまうというか…。それは「ヴィジュアル系」にとって良くないのではと。「中二病(笑)」の時代にヴィジュアル系をやるのって大変だと思うんです。

RYO:SUKE:ほんとに良くないムード感ですよね。要は「サブカルチャー」って言われてるものが、すごく浅い解釈でひとくくりにされてる時代だなって。

――その言葉も元は全然違うニュアンスだったのがひとり歩きしてますからね。

RYO:SUKE:そういうふうに「サブカルチャー」をひとくくりにしたほうが、大人がPRしやすいのでは。

要は何かを売っていく立場の人が、大衆に対してアプローチしやすいというか。
例えばアニメだって昔は「キモい」みたいなところがあったじゃないですか。「アキバ行く奴はオタク」みたいな。

でも今はそんなことはないじゃないですか。普通の高校生や大学生だって「アニメみてるよ」「今期何みてるの?」って言えちゃう時代だし。秋葉原にもカップルで行く人もいる。
ひょっとしたら、それが「サブカルチャー」というものを、ある程度マスに向けたことによる、功績のひとつなのかもしれないけど、その分解釈がどんどん浅くなってしまう。

そのムードに時代が流れされていってるんだと思うし、今のヴィジュアル系シーンにもなんとなく漂っているなと思うんです。
それが本当に良くないな、変えていかなきゃいけないなと、このスタイルに行き着いた部分もあります。

エンタメをやっているんだったら、今確立されてる物を破壊してやるぞっていう精神が絶対必要だと思うから。それがないなあっていうのが。いま世の中的に寂しいし、不健康だし、だからこそ自分が次の時代を作る側になれるチャンスにもなるなと思って。

――新しい時代、次の時代を作りたいと。

RYO:SUKE:僕は「iPhoneになりたい」と思うんです。iPhoneって、最初に世の中に出てきた時には、絶対にみんな「いらないよこんなの」って思っていたはずなんですよ。
「画面傷つくし」「ボタンは? フリック入力って何それ?」「デザイン黒と白しかないの?」みたいなことを、絶対最初はみんなが思ったはずなんですよ。

でもiPhone作った時にスティーブ・ジョブズは「こっちのほうが絶対暮らしは便利になるし、豊かになるから!」と、信じていたわけじゃないですか。それが今はiPhoneが当たり前の時代になっている。

僕はホント世の中に対して「絶対こっちのほうが! 音楽、エンタメは楽しいですから!」って思っていて、そういう精神で表現、ものづくりに関わっていきたいという思いが凄く強いんです。