人によっては、Wキャストが苦手な人もいると思います。作品によって作り方も違うと思うし。
わかりやすく、前回の『王家の紋章』で説明すると、例えば、新妻聖子さんと宮野真守さん、平方元基さんと佐江といった、固定した組み合わせしかないWキャストでお芝居を作るのなら、お稽古はよりスムーズだと思うんです。
でも、Wキャストが2組いて、ペアを固定しないとき、「こっちの人とも稽古しておいた方がいいよね」となって、お稽古にもすごく時間が必要になるんです。
現場によっては、ひとつのペアを完成させた後、別のペアを作っていくところもあると思うんです。
でも今回は、私がやる「サンディー」だけが、花澤香菜ちゃんとWキャストです。うーん、そうだなぁ…、前回の『王家の紋章』のときに感じて、今回も同じように感じていることは、
同じ役だけど、まったく違うものを観せられるから、Wキャストって面白くて、Wキャストだからといって、まったく同じものにする必要はないということ。
でも現場によっては、例えば、海外なら、Wキャストどころか、トリプルキャスト、クワトロキャストもあったりします。台詞の言い回し、間(ま)、動き、歌い方、感情の持ち方、すべて決まったものしかやれないこともあるかもしれない。
だけど、ありがたいことに、今まで自分が経験してきたWキャストは、それぞれの個性を出して、臨ませていただけました。今回も、
「佐江ちゃんは佐江ちゃん、香菜ちゃんは香菜ちゃん。全然違うサンディーがいて、楽しい」
って。(岸谷)五朗さんからや、他のキャストさんからも言っていただけました。
あと、人に言っていただいて、自分もそうだなと感じているのは、花澤香菜ちゃんのサンディーは、ありのままの香菜ちゃんがサンディーとして生きて、舞台に立っているという感じで。
私のサンディーは、サンディーという役を演じているという感じなんです。
実際の自分っぽくはない役ですし、テクニックを使って観せなきゃいけないな、というのは、稽古に入る前から感じていました。
以前、初めて地球ゴージャスに出たときに、寺(脇康文)さんが、いろんなところで言ってくれたことがあって。
「右も左もわからない感覚のまま、ありのままの佐江ちゃんで役と向き合う姿。その姿を、僕たちは二度と出すことはできない。初めての舞台でしか出せない初々しさがある」
って。当時はそう言われても「あ…、そうなんですか(汗)」という感じでしかわからなかったんです。
だけど今回、香菜ちゃんは、舞台に立つのは約10年ぶりで、こういう大きい舞台に演劇で立つのも初めてだそうで。そういう香菜ちゃんを見ていると、寺さんが、あのとき私に言ってくれていた言葉の意味がすごくよくわかるんです。
それは、まっけん(新田真剣佑)を見ていても思います。右も左もわからない状態で、役に体当たりでぶつかっていく感じ。これは確かに、もう、私には出せなくなってしまっているなって、すごく感じました。
ーーそれは、自分が成長したなと誇らしく感じるのか、それともちょっと淋しく感じるのか、どちらなんでしょう。
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