次に夫が手を出したのは…

次に夫が手を出したのはFX。これは外国為替取引の一種で、ネット専業の証券会社にとって主力商品です。一介のサラリーマンである夫が上手に運用できるわけもなく、資産はあっという間に目減りしました。もちろん、手持ちの資金を投資するだけでは損失が大きく広がりません。

しかし、夫は信用取引(証券会社からお金を借りて投資すること)に手を広げたので墓穴を掘りました。信用取引の残高はみるみる増えていき、100万円になった段階で奈央さんに発見されたのです。なぜ、夫は資産を増やす必要があったのでしょうか。

夫は「仕事の付き合いだから」と言いますが、後輩と飲みに行ったとき、お金が入ると気が大きくなるようで、10~20人の飲み会の会費をすべておごってしまうことが続いたそうです。

そのうち、今度は夫の両親が訪ねてきて「うちのアホ息子を捨てないでください。私たちに免じて今回は許してください。」と頭を下げ、100万円を用立てることを約束したそう。そして夫自身も「俺は生まれ変わった。同じことは二度としない」としおらしい態度をとったので、奈央さんも怒りの気持ちをおさめたのです。

しかし、夫がおとなしかったのも半年だけ。ほとぼりが冷めると元の木阿弥。また散財するようになったのです。「仕事の付き合いでゴルフに行かなきゃいけなかった」と言いますが、夫は知らぬ間にゴルフバッグやドライバーなどの一式を購入していました。奈央さんがそのことに気付かなかったのは、夫がトランクルームを借り、そこに置いていたからです。

もちろん、夫にはゴルフ用品の購入費、ゴルフ場の利用料、交通費などを支払うお金はありません。消費者金融でお金を借り、仮想通貨で運用しようとしたのですが、連敗続きで元本割れの状態。借金の返済が遅れるたびに金利や遅延損害金が上乗せされ、どんどん膨れ上がったのです。

もともと夫は家に毎月15万円の生活費を入れていたのですが、毎月勝手に減らされ、奈央さんは実家に相談。不足分を両親に借りるしかなかったようです。実家からの援助は合わせて50万円。どうしたらいいか分からず、筆者のところへ相談しに来たのです。

肩代わりした借金が多いほど離婚しにくくなるジレンマ

今まで夫は何度も金銭トラブルを起こしていたにもかかわらず、なぜ奈央さんは途中で離婚を決断できなかったのでしょうか。

サンクコストという言葉があります。これは今すぐにやめても回収できないコスト(お金、時間、労力など)のことです。

奈央さんはこれまで20万円の自分の貯金と、50万円の実家からの援助を費やしてきました。離婚したとしても夫から計70万円を回収するのは難しいでしょう。夫が少しでも立ち直る可能性があるのなら結婚生活を続けた方がいい。70万円を無駄にしたくないという心理が働きます。これだけ仕送りをしたのに離婚したら両親に何を言われるか分かりません。

しかし、これ以上結婚生活を続けた場合、夫の借金は増え、そのたびに奈央さんが穴埋めしなければなりません。筆者は「サンクコストを忘れ、今後の人生をどうしたいですか?」と尋ねたところ、奈央さんは「それなら別れたいです」と答えました。

さすがの夫も「借金は今回で最後にするから」と言えず、すんなり離婚届に署名したようです。どこかで損切りをしなければならないのなら早い方が望ましいです。

夫にとって奈央さんは「打出の小槌」のような存在でしたが、奈央さんはようやくそこから抜け出すことができたのです。

1980年生。国学院大学卒。行政書士・FP。離婚に特化し開業。6年目で相談7千件、会員は6千人を突破。バナナマン設楽さんの「ノンストップ」、明石家さんまさんの「ホンマでっかTV」、EXITさん初MC「市民のミカタ」などに出演。「STORY」「AR」などファッション誌にも登場。著書は「婚活貧乏」など11冊。