「関係の主導権を握るのは相手」という現実

Bさんの不倫は、相手の既婚男性から好意を寄せられて始まっていました。

BさんもA子さんと同じくリスクの高い不倫について相当に悩んだそうですが、それでも肉体関係を持ったのは、やはり「あの人のことが好きだったから」。

「そのときは、隠し通せばいいだけだって、早く結ばれたくて必死だった」と話すBさんに、A子さんは今の自分の姿を重ねたそうです。

ところが、いざ始まった関係はBさんが我慢することが多く、せっかくの週末も家族サービスを優先されてなかなか会ってもらえず、男性が指定した日にようやくデートができるような状態でした。

これが不倫だとわかっていても、Bさんのなかでは

「自分から好きだと言っておいて、私のことを平気で放置するのね」

と男性を恨む気持ちが強くなり、それでもやめられない自分についても、苦しかったといいます。

結局、年末年始のお休みすら長く会える時間を作ってもらえないことに怒ったBさんが、不倫を奥さんに伝えると言い出し、それにまた腹を立てた男性が「脅迫するのか」と警察に駆け込もうとしたことで、関係は最悪の終わりを迎えました。

「Bの、『不倫って、向こうに主導権があるのよ。こっちはどこまでも待たされる側にしかなれないの』という言葉が、忘れられません。

そうですよね、相手が離婚しない限りまともに付き合えることはないですもんね」

と、A子さんはため息をつきました。

「先のない恋愛」はどうなるのか

Bさんに会って話を聞くまで、「自分もそのときのBと同じく、隠すことさえできればいい、不倫でも大丈夫だって、言い聞かせていました」とA子さんは自分の状態を振り返ります。

「でも、たとえバレなくても、Bのように最後は憎しみあって終わることもあるのだなと思ったら、自分がそうならない保証はない、と思いました。

そもそも、不倫ってどんな終わりがあるのだろうって考えるようになって……」

A子さんが見抜かっていたのは、「相手が結婚している以上は離婚して独身にならない限り自分とは付き合えない」という現実で、それは手出しのできないことなら、本当に「待たされる側」にしか自分はなれません。

不倫は先のない恋愛で、続くほどにBのように苦しむのだと、A子さんは想像したといいいます。

「お互い独身なら、大変な関係でも何とかなると思って飛び込むこともあるのかなと思うのですが、それはふたりで幸せになれる未来があるからですよね。

不倫って、向こうが変わらない限りいつまでも日陰の存在でいないといけないのだなと思ったら、先のことがすごく不安になりました」

その結果別れることになったら……とつぶやいて、A子さんは視線を落とします。

Bさんのような結末は不倫関係では決して珍しいことではなく、不誠実な相手に対して業を煮やせば、自分がどんな手段に出るかわかりません。

その結果追い詰められるのは相手だけではなく自分も同じで、そんな可能性のある関係が不倫なのだと、A子さんは改めて考えたそうです。