先日、ウレぴあ総研編集部から仕事の依頼がきた。埼玉県和光市に行ってほしいという。
待ち合わせの地下鉄成増駅に集合した後、引率者とともにタクシーに乗り込む。そして到着したのは、
寺だった。
なぜ……寺……。
今回お邪魔したのは、清龍寺不動院。約1200年の歴史を持つ由緒正しいお寺である。それはいいのだが、どうして僕は仕事でお寺に連れて来られたのか。
あの、これから何が始まるんですかね。
「山田井さんと薄さんには、これからこちらで滝行を受けていただきます」
ええー!?
た、滝行って、あの滝行!? あの、白い服と鉢巻をして滝の下で手を合わせるやつ?
どうしよう。まったく意味がわからない。
呆然とする僕に、引率者から次のような説明があった。
「私、薄(うすき)は映画『ハミングバード』の宣伝マンで、主演俳優であるジェイソン・ステイサムみたいな強い男になることを目指して『ジェイソン・ステイサムへの道!』と題した企画を実施中です。これまではジムに入会して筋トレなどを行ってきましたが、それだけではステイサムにはなれません。強靭な精神力を持ったジェイソン・ステイサムになるためには、心も鍛えないといけないのです。そこで滝行です」
ちょっと待って。「ステイサムみたいになる」ことと「そこで滝行です」がまったくつながってないと思うんですが。というか、百歩譲って滝行を受けるとして、薄さんが滝行を受けている様を僕が取材するってことじゃないのか。なぜ僕も一緒に受けることになっているのか。
困惑する僕をよそに、どんどん話を進める引率者。
「そんなわけで、お二人にはこれからこちらで滝行を受けていただきますね。さっそく受付をしましょう」
清龍寺不動院では、純粋に滝行を受けるだけなら料金は3,000円。特別祈祷つきだと5,000円となる。今回は特別祈祷も一緒にお願いすることになっているようだ。ちなみに瀧行衣や草履といった服装一式は貸し出してもらえるので用意する必要はない。
……って、いつの間にか僕も一緒にやることになっているが、すでに申し込み済みということだし、ここまできたら仕方ない。ここはひとつ、滝行とやらで男になってやろうじゃないか。もちろん、滝行自体は初めての体験である。
まずは受付で申込書に名前や住所などを書いていく。「滝行の目的」という欄があったので、正直に「ステイサムになる」と書いておいた。……ああ、住職の怪訝な目が痛い!
隣を見ると、薄氏は堂々と「ステイサムになる!!」と書いていた上に、「ステイサムになる」とプリントされた自作のTシャツまで着ている。どんだけやる気なんだ。ちなみにこういう俗っぽい理由であっても、まったくOKらしい。最近は結婚披露宴を控えたカップルが、永遠の愛を誓うために滝行を受けるケースなども多いのだという。