若い女性に発症が多い子宮頸がんをテーマにしたシンポジウム「未来を守る、私たちの選択~親子で学ぶ子宮頸がんとHPVワクチンのこと~」が8月3日、大阪市中央区の読売テレビ10hallで開催されました。

大阪市は、大阪・関西万博の開催に向けた健康増進の機運醸成と、健康づくりにかかる各種事業について、民間企業等関係機関と連携し情報発信やプロモーションを進める「大阪市健康づくりプロモーション事業」を実施。その事業の一環として、子宮頸がんや子宮頸がん予防(HPV)ワクチンについての正しい知識が学べるシンポジウム「未来を守る、私たちの選択 ~親子で学ぶ子宮頸がんとHPVワクチンのこと~」を開催しました。シンポジウムでは、女優、タレントで子宮頸がん罹患の経験をもつ原千晶さんによる講演や、専門医師を交えたパネルディスカッションなどが行われ、集まった約100名の観客がメモをとるなど、熱心に聞き入りました。

■登壇者紹介



タレント
原 千晶さん

1974年北海道生まれ。94年芸能界デビュー。
以降、TVや雑誌等を中心にタレント、女優として活動。2005年30歳の時に子宮頸がんと診断を受け、09年に再び子宮にがんが見つかり、10年1月より手術、抗がん剤治療を行う。11年7月、自身のがん経験をもとに婦人科がん患者会「よつばの会」を設立し、がん啓発に関わるイベントや講演会に積極的に参加している。
一般社団法人日本キャンサーアピアランスケア協会理事。





Inaba Clinic院長
稲葉 可奈子さん

京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。
京都大学医学部附属病院(初期研修)、東京大学医学部附属病院、三井記念病院、関東中央病院を経て、2024年7月より現職。
産婦人科専門医、「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表を務め、子宮頸がん予防や性教育など生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを発信している。4児の母。







フリーアナウンサー
八木 早希さん

1978年アメリカ・ロサンゼルスで生まれ、大阪育ち。
2001年同志社大学文学部英文学科卒業。毎日放送アナウンサー、NEWS ZEROキャスターを経て、女性活躍等に関する講演活動も行う。ABCラジオ・TBSラジオ「Changeの瞬間(とき)~がんサバイバーストーリー~」のパーソナリティを務め、100人以上のガン経験者との対談経験を持つ。2児の母。



■原千晶さん 基調講演「子宮頸がんになって気づいた、自分の体と向き合うことの大切さ」

▶︎1回目のがん宣告 子宮温存を決断
 30歳の時、ひどい生理痛や不正出血に見舞われ、大学病院で検査したところ、初期の子宮頸(けい)がんと宣告されました。がんの診断以上にショックだったのが、「子宮をとった方がいい」と勧められたことです。出産したい気持ちが強かったので、涙がとまりませんでした。さらに、先生に言われました。「今なら子宮をとるだけですむからね」。再発や転移を防ぐという意味で核心を突いた言葉でしたが、当時は「なぜ初期なのに」と理解できず、悩んだ末に手術を拒みました。

 毎月の定期検査を欠かさない条件で、先生は決断を尊重してくれ、それから順調に経過観察を重ねていきました。2年ほどたった頃、通院日を忘れた月がありました。来月行けばいいや。体調が安定していたこともあり、軽い気持ちでやり過ごしました。ところが、翌月も、翌々月もさぼってしまい、あろうことか、その月を境に通院しなくなってしまいました。

▶︎5年後にまさかの再発 リンパ節にも転移
 宣告から5年目に入ろうとしていた頃、再び不正出血やひどい腹痛が続くようになりました。「まさか、またがんじゃないよね」。何度も頭をよぎりました。無断で通院をやめてしまった大学病院には顔を出せず、別の病院で検査したところ、子宮内部に新たに悪性の高いがんができ、リンパ節にまで転移していたのです。「ここまで、なんでほっといたの」。検査した先生の言葉に、ただうな垂れて泣くばかり。震えながら「死にたくない」と念じました。子宮どころか、卵巣など全生殖器とリンパ節を摘出することになり、手術後の抗がん剤治療とあわせて入院生活は半年に及びました。

▶︎大切な人を守るため 正しい知識で正しい選択を
 最初に宣告を受けた時、病気について学ぶ努力をしていれば、子宮を摘出することで2度目のがんは避けられたと思います。再発しないと高をくくり、通院をやめるという最悪の選択もしなかったはずです。正しい方向に舵(かじ)を切るには正しい知識が必要です。皆さんには私のような失敗は絶対してほしくない。子宮頸がんの患者会で多くの女性に出会いましたが、残念なことに幼い子どもを残して天国に旅立った方もいました。自分の体を大事にすることは、自分の大切な人を守るということをぜひ再認識してください。
■パネルディスカッション「正しい知識が命を守る。HPVワクチン接種で予防できる“子宮頸がん”」

パネリスト・原 千晶さん・稲葉 可奈子さん(Inaba Clinic院長)・塩谷 佐紀子さん(大阪市健康局健康推進部健康づくり課 保健師)モデレーター・八木 早希さん(フリーアナウンサー)

■原因が分かる数少ないがん 検診とワクチン両方で防ぐ
稲葉:子宮頸がんはマザーキラーとも呼ばれるほど、結婚や妊娠を考える20代後半から40代の患者さんが多く、国内では毎年約1万人が発症、数千人が命を落としています。発症理由が解明されている数少ないがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因とされています。ありふれたウイルスですが、感染者の1割程度で細胞に異常が現れ、子宮頸がんに進行してしまいます。ただ、細胞の異常は顕微鏡検査で判別できるので、検診を受けることで発症前に気づくことができます。

原:若いから検診に行かないという声を聞きますが、私もそうだったから気持ちはよく分かります。でも、ある日突然、がん宣告された経験から言えば、発症前に分かるなんてすごいメリットで、この情報がもっと広まれば、検診を受ける方も増えるんじゃないかと期待しますね。

稲葉:検診以外にもう一つ、根本的な予防方法があります。それが、感染を防ぐHPVワクチンです。約200種類のHPVのうち、がんの原因になるタイプは15種類。このうち約9割はワクチンで予防できます。残りの1割に備えるため、20歳以上の方には検診も併用していただけるよう呼び掛けています。

■大規模調査で安全性を確認 打たないリスクにも目を向けて
八木:がんがどこにあるか分からず、効果的な治療法が見つけられずに苦労している患者さんも多いなか、原因や予防法がはっきりしているということは、ぜひ知っておきたい情報ですね。一方で、ワクチンそのものに不安を抱える方もいます。接種後の副反応はどんなものがあるのでしょうか。

稲葉:筋肉注射なので痛みはありますが、翌日にはほぼ治まります。確かに約10年前、接種後に強い痺(しび)れや痛みが続いたという報道があり、不安が広がりました。そのため、ワクチンの安全性を確認する調査研究が国内外で行われました。接種した人としなかった人を数万人規模で比較したところ、そうした症状は接種の有無に関わらず、同程度の頻度で発生し、ストレスなどが原因の機能性身体症状であると考えられています。接種後に何らかの重篤な症状を訴えた割合は1万人あたり5人で、ほとんどが回復しています。その一方で、子宮頸がんになる割合は1万人あたり132人にのぼります。ワクチンを打つリスクを考える時、打たないリスクについても目を向けてほしいと思います。

■無料期間は来年3月まで ぜひこの機会に検討を
塩谷:接種する恩恵のほうがリスクを大きく上回ります。大阪市でも正しい知識を知っていただくため、YouTube動画やセミナーなどを通じて啓発活動をしてきました。ワクチンの無料定期接種は小学6年生から高校1年生の女性を対象に行っています。定期接種を逃した方でも、平成9年4月2日から平成20年4月1日生まれまではキャッチアップ接種といって、令和7年3月31日までは無料で接種できます。接種は原則3回で半年かかるので、今年9月末までには1回目の接種をお勧めします。他の自治体でも同様の取り組みがありますので、問い合わせをしてみてください。

稲葉:実費だと約9万円かかりますから、この機会を逃さずにぜひ接種を検討してもらいたいですし、この情報を友だちにも伝えてほしい。検診率、接種率ともに高いオーストラリアでは2028年に子宮頸がんは撲滅すると言われていています。日本でも目指していきたいし、少なくとも情報を知らずに行動を起こせなかったという人がいなくなるようにしていきたい。

原:リンパ浮腫を発症するなど、今も後遺症を抱えています。QOL(人生の質)を高めていくには、がんにならないことが一番です。若い女性にはぜひ接種していただき、子宮頸がんになる方が一人でも減ってくれることが私の最大の願いです。


※シンポジウムの様子は動画でもご覧いただけます。




▶︎子宮頸がんやHPVワクチンについての詳細はこちら
https://www.city-osaka-kenko.jp/hpvv/
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