ネックだった「面会交流」

「元夫が食い下がったのが、息子との面会交流でした。浮気したくせに『俺の息子なんだから、会う権利がある』とか調停委員に言うのを聞いて、本当に腹が立ちましたね……」

それでも、息子にとってはたった一人の父親だからと調停委員のふたりからも説得され、渋々と月に二回の面会交流を決めます。

待ち合わせは元夫と自分のアパートの中間にある公園で、面会交流でかかった費用について自分に請求しないこと、決められた時間に必ず息子を引き渡すことなど、調停のなかで取り決めもできていました。

「元夫は、最初のうちは決めたことを守っていました。何か違反すれば、私が裁判所に駆け込むと思っていたはずです」

問題は、「元夫ではなく息子だった」といいます。

「まだ9歳の息子に、父親の浮気なんて言えるわけないじゃないですか。子どもにすれば、ある日から親の仲が悪くなって母親に連れられて家を出て、父親と離れ離れで暮らす生活が始まったのですよね。

『明日はお父さんに会えるよ』と言うとうれしそうな顔をするのが複雑で、面会交流が終わって帰ってきたら『寂しい』と言って泣き出すのも、本当につらかったです」

そんな息子の状態に、元夫は「もう少し長い時間一緒にいることはできないか」と、週末に泊りがけで預かることを提案してきます。

敦子さんに伝えるより先に「これからは泊まりでおいで」と言われた息子さんは、もう決定したように喜んでいて、それを見た敦子さんは「反対なんてできない」と、面会交流のやり方の変更を受け入れました。

元夫からの新しい要求

「それからは、月に二回、週末は泊りがけで元夫のところに息子を預けています。

私もその間はひとりの時間をゆっくりできるし、友達と飲みに行ったりと新しい楽しみもあって、それはいいのですが……」

離婚に巻き込んでしまった息子への罪悪感から「息子さえ幸せなら」と、自分抜きで楽しい時間を過ごしている様子を見ても、笑顔で話を聞くようにしていたそうです。

そんな面会交流にまた変化があったのは、元夫から「これからは、参観日や運動会も参加したい」と言われたときでした。

離婚後は、参観日は敦子さんが学校に行き、運動会や音楽会などの行事については知らせることはしていなかったといいます。

「『息子が自分にも学校に来てほしいと言っている。一緒に見ることはしなくても、俺も参加したい』と、元夫からLINEでメッセージが届きました。

今まで、平日に行事があっても有給を取って学校に行っていた人なので、その気持ちは理解できました」

自分が言わなくても息子の口から行事については知れてしまうし、息子に確認してみたら「お父さんにも来てほしい」と元夫と同じことを言うのを聞いて、敦子さんは参加してもいいと決めます。

どこまでも「息子のため」が先に立つ敦子さんは、「息子が父親の存在を望むのであれば、できるだけ叶えるのが私の役目かもと、その頃は考えていました」と、自分が感じるストレスについては仕方ないと割り切っていたそうです。

ところが、いい意味で変化があったのが、元夫の態度です。